太古の龍
丁字路を曲がり、しばらく歩き続けた俺とまーちゃんは、沼野の奥地にある広場に辿り着いた。
霧でよく見えないが、思ったより広いし、泥濘ばかりというわけでもない。あいつが整地したのか、それとも自然にできた場所なのか。それは定かではないが、これだけ広けりゃ寝床にもリングにもぴったりだ。
そんな場所に陣取っているそいつはというと、広場の奥にいるらしく、霧のせいで影すらロクに見えていない。
(お山の大将気取りかよ)
そうツッコミを入れたところで、気流が変わったのか、まるで御簾が上がるように霧がスーッと晴れていった。
そこに現れたのは、臙脂色の鱗を纏い、立派な双翼と2本の角を生やした爬虫類のような魔物。典型的なドラゴンだ。
さっきの咆哮と霊峰ドラゴと隣接しているということから、ある程度の予想がついていた俺は、やっぱりと思うと同時に、その凜々しくも威厳のある姿にかっこよさを感じていた。
その一方で、まーちゃんは目の前にいる存在が信じられないらしく、顔を強張らせている。
「ん? どうした? まーちゃん」
「そんな……どうしてこんなところに……」
「どうしてって、ただのドラゴンだろ? そんな珍しいもんじゃ……」
俺がそう言うと、まーちゃんは首を横に振った。
「いいえ。あれはただのドラゴンなんかではありません」
「へ?」
素っ頓狂な声を出す俺に、まーちゃんは続ける。
「あれは……ラグナヴェルト誕生の頃から存在しているといわれる世界最古のドラゴンであり、魔物トップクラスの魔力を誇る伝説の龍・エンシェントドラゴンです」
「エンシェントドラゴン、ねぇ」
なるほど。そっかそっか~…………って、はーっ!? なんだその如何にもヤバそうなプロフィールは! どう考えてもラスダン前後のダンジョンで出てくる強敵モンスターじゃねぇか! んなのが、こんなとこにいんの!? そりゃそうもなるわ!
「一般的なドラゴンに似てますし、私も書物で見たことがある程度なので、断定はできませんが、おそらく。ただ、見たところ幼体のようですし、本来はルビーのようにキラキラとした赤い鱗をしているので、亜種だとは思いますが」
それだけが救いか。とはいえ、亜種で幼体ってことは、伝説級の力を持つ本家の6~8割ぐらいの強さはあるってことだろ? こりゃ気が抜けねぇな。
「まーちゃん。いつも通り援護を頼む」
「はい!」
覚悟を決めた俺が剣を抜き、戦闘態勢に入ると、エンシェントドラゴンは俺らを外敵だと認識したのか、空間が揺さぶられるほどの咆哮を上げた。
「グァアーッ!」
「うっせーなぁ。鼓膜が破れたらどうすんだ。あんまりうるせぇと、その口ぶった切んぞ。クソトカゲ」
俺がそう言っても、奴はギャン泣きするガキのように吠え続ける。こりゃさっさと黙らせねぇと、マジで耳がおかしくなりそうだ。
「いくぞっ!」
そう言って俺は、沼の主であるエンシェントドラゴンの幼体に戦いを挑んだ。




