いつかここに
ドンカカのアジトを発ってから2日経ったノルムの27日。ビースト平原を彷徨っていた俺達は、危険を承知で今日も野宿していた。
食事を終えた俺は、いつものようにまーちゃんに火の管理を任せて、ゲームの構想を練る。元の世界では体験できないことばかり経験したからか、世界観のイメージが湧きやすくなり、作業は捗っている。
それはいいんだが、1つだけ、どうしても解決し難い問題がある。
それは、この平原の広大さだ。地図によると、ドンカカのアジトとギルディアの中間あたりに来ているみたいだが、そこに至るまで、町はおろか、一軒家すら見当たらない。
そのため、夜になると辺りは漆黒の闇に包まれ、夜行性の魔物のパラダイス状態になってしまう。今は交代で見張りをしてるし、魔除けの火種にも余裕があるからまだいいが、魔物が唸り声を上げているこの状況下で、もし底を尽きたらと考えるとゾッとする。
「……ったく、気が休まらねぇな」
「ですね。これだけ広大だと、休むのも一苦労です」
まーちゃんの言うとおりだ。こんなところじゃおちおち眠れやしない。
きっと、先人の中には、俺と同じことを考えて、一軒家なり村なりを作った奴がいたかもしれない。が、跡形も残ってないところを見ると、野盗や魔王の軍勢に襲われてしまったんだろう。
(それを繰り返してく内に、誰も家すら建てなくなったってとこか)
けど、本当にそれでいいんだろうか? 魔王がいなくなったら、魔物も一緒に消えるとは限らない。平和になったからって、悪党が悪さをしない保証もない。
そんな中で、何事もなくここを踏破するのは至難の業だろう。俺みたいに転移魔法すら覚えていない奴なら尚更だ。
じゃあ、どうする? 答えは簡単だ。何度もトライすればいい。何度もトライして、家から村へ、村から町へと発展していけばいいんだ。
え? 誰がそんな途方もないことをするんだって? いるじゃねぇか1人。それを為そうと夢見てる奴が。
「なぁ、まーちゃん」
「皆まで言わなくてもわかります。私も、同じ気持ちですから」
「てこたぁ……」
「はい。この旅が終わったら、ここに私の町を作ります。ポルトギルドとギルディアの中継地点となり、ここを通る人々のオアシスとなる商業都市を、私だけのマルーシェを」
「いいんだな? 生まれ故郷じゃなくて」
念の為そう聞くと、まーちゃんは力強く頷いた。まーちゃんの心はとっくに決まってたんだ。
大商人になって町を作り、人々を支える。それがまーちゃんの夢であって、生まれ故郷じゃなきゃダメなんて、一言たりとも言ってない。立地的に商業都市として機能するか、そこが重要なんだ。
「わかった。ならそん時は、俺にもお前が作った町だってわかる名前にしてくれよ。あのアホ精霊が何かの手違いで、俺をこっちに残すかもしんねぇし」
「それはかまいませんが、具体的にどういう名前にすれば?」
「そうだなぁ……例えば、俺かお前の名前を入れるとか。あ、でも、それだと町の名前がダサくなりかねねぇな」
我ながら自分の名付けのセンスの無さが恨めしい。考えても考えても名案が浮かんでこない。こんなのでゲームクリエイターになろうするなんて、大丈夫か? 俺。
まぁ、最終的に名前をつけるのはまーちゃんだし、そこは一任するとしよう。かといって、おれの貧困なセンスを野放しにするわけにもいかない。なんとかしてセンスを磨かねぇとなぁ。
そんなことを考えながら、俺はその夜、眠りについた………………




