血縁より強い家族
その夜。さっきまでバトっていた塔の屋上では、結婚20周年とフォルトゥナハートを手に入れたことを祝して、親分抜きではあるが宴が行われていた。
それはまぁ、めでたいことなんだろうし『ご自由にどうぞ』って感じなんだけど、なんで俺らまでその宴席に呼ばれてんだろ……?
まぁ、もう和解したことだし、夜のビースト平原で野宿するよか100倍マシだから、別にいいけど。
「しっかし、こいつら元気だな。あんだけボコボコにされたってのに、まだ騒げんのかよ」
「そう言ってやんな。こんなバカ騒ぎや贅沢なんて、そうそうできるもんじゃないんだ。好きにさせておやり」
「そうなのか?」
「あぁ。ここにいる連中のほとんどは、第2世代以降のスラム出身者でね、てめぇの落ち度なんてなーんにもないのに、親の代からスラム出身ってだけで差別されて、ひもじい思いをしてきたんだ。その反動からなのか、こいつらは祝い事とかたまに収穫がデカい日があったりすると、こうして宴を開いて、朝から晩までドンチャン騒ぎをしてるんだ」
なるほど。それで……てか、こいつらもスラム出身だったのか。育ちが良くねぇとは思ってたが、ドンカカ夫婦と同郷とはな。
「もしかして、あの人達を仲間を加えたのって……」
「察しのとおり、あの子達の為を思ってのことさ。ギルドは、名門であればあるほどスラムの住民を煙たがる。それはあたいらが身を以て経験してる。そんな目にあの子達を遭わせたくなくてね。犯罪の片棒を担がせることに負い目はあったけど、せめて食い扶持だけでもと思って仲間にしてったら、いつの間にかこんな大所帯になってた」
そっか。ドンカカとマオなりにちゃんと考えてゴン達を……ドンカカの足を洗わせようとしてたマオのことだ。そこに至るまでにはきっと、葛藤もあったんだろうな。
「それだけ面倒見がいいと、なんだか盗賊の妻というより、大家族のお母さんの方がしっくりきますね」
「いいこと言うじゃないか嬢ちゃん。素直に嬉しいよ。それにその表現、あながち間違いじゃないよ。こんな騒がしくてガラの悪い奴らでも、あたいにとってこいつらは、大事な家族であり、かわいい子分だからね」
「へへっ、いいのか? んなこと言って。年老いてからできた子ほど溺愛すんのは、全世界共通だからな。実の子供ができた途端、『やっぱり我が子の方がかわいい♡』っつって、子煩悩にでもなったら、あいつらお前の子に嫉妬しかねねぇぞ?」
俺が調子に乗ってそう言うと、マオは答えづらかったのか、一瞬顔を曇らせて答えた。
「……そうはならないよ」
「おっ、大した自信だな。よっぽどあいつらとの絆を信じてるってわけか」
「まぁね。と、言いたいところだけどそうじゃない。こいつは自信なんかじゃない。事実だからさ」
「というと?」
まーちゃんがそう聞くと、マオは手にした酒を1口飲み、腹を摩りながら、
「あたいはね、生みたくても生めないんだよ。20年前、大会で負けて、クソ野郎共に三日三晩嬲られたせいで、ね」
と、明かした。思ってもみなかった答えに、俺とまーちゃんは言葉を詰まらせる。
「その……すまねぇ。考えなしに聞いちまって」
「謝るこたぁないよ。知らなかったんだし」
「けど……」
「それにね、何も全部が全部不幸ってわけでもないんだ。子供を生めないからこそ、飢え死にしかけてたゴンとコボに母性が沸いて、拾うことができたし、この子達を我が子のように愛せる。それだけで、十分幸せだよ」
満足げにそう話すマオを見て、俺は杞憂だったと悟り、少しホッとした。
てっきり俺は、自分が一生母親になれないと諦観して、ゴン達と家族ごっこをしてるんだと思ってた。
けど、違った。マオはとっくの昔に作ってたんだ。妥協や現実逃避なんかじゃない。血の繋がりがなくても、強い絆で結ばれた本物の家族以上の仲間を。
まぁ、ゴンとコボを拾ったのは、母性っていうより、不良が土砂降りの雨ん中捨てられてた仔犬を拾ってくるあれと同じだと思うけど。
大泥棒ドンカカ(Lv20)のステータス
HP……66
MP……20
物理攻撃力……75(装備による加算あり)
物理防御力……86(同上)
魔法攻撃力……5
魔法防御力……45
素早さ……73(装備による減少あり)
命中……25(同上)
運……60(装備による加算あり)
・装備
盗賊の斧(物理攻撃力25 素早さ-5)
盗賊の頭巾(物理防御力10 命中-5)
ブーメランパンツ(物理防御力5 素早さ20)
盗賊の手袋(物理防御力20 魔法防御力5 運20)
革のブーツ(物理防御力1)
・特技……【盗む】 【とんずら】 【フルスイング】 【兜割り】




