お仕置きの時間
だとしたら、俺達はなんだ? バラエティ番組の企画でこういう依頼を受けて、前もって準備し、本番では成功するように陰ながらサポートするタレントか?
「よかったですね。勇さん」
「あ、あぁ」
(まーちゃんは心から祝ってるみたいだけど、どうも釈然としねぇんだよなぁ……なんでだろう? 相手がアホで変態のドンカカだからか?)
そう思うと、なんだか行動に移したくなってくる。
てなわけで、ドンカカの側まで行った俺は、奴に【ヒール】をかけて、戦いで傷付いた体を癒やしてやった。
「よかったな。オッサン」
「お、おう。それもこれもお前らのおかげだ。ありがとよ」
「礼には及ばねぇよ。ところでよー、オッサン。話は変わるが、なーんか忘れてねぇか?」
笑顔の俺にそう聞かれて、ドンカカは心当たりがないのか、
「……へ?」
と、素っ頓狂な声で聞き返す。
「『へ?』じゃねぇよ。オッサン、俺らに何したか忘れたわけじゃねぇよな? お前んとこの部下のせいで、こっちは荷物を盗られるわ、干からびそうになるわ、岩に押し潰されそうになるわで、散々な目に遭ったんだぞ? なのに、責任者として何の落とし前もつけずに、タダで物を貰うっつーのは、ちょーっと虫が良すぎないか?」
変わらない笑顔で淡々とそう言う俺に恐怖を感じたのか、ドンカカの顔がどんどん青ざめていく。
「え? お、おい。ちょっと待てよ。話が違うじゃねぇか。だってさっき嬢ちゃんが……」
「それはまーちゃんが許しただけで、俺は『許した』とは一言も言ってねぇ。わかったらとっととケツを向けろ。1発で許してやっから」
そう言って俺は勇者の剣に風を纏い、4番バッターのような豪快な素振りを始めた。
すると、この罰からは逃れようがないと判断したのか、マオがドンカカの体勢を整えてくれた。
「って、おい! マオ! おめぇ、何手伝ってやがんだ!」
「悪いねあんた。けど、こればっかりは仕方ないよ。ここは親分らしく責任とって、男らしくバシッとくらってきな」
「じょ、冗談じゃね……!」
ドンカカは、この期に及んで往生際悪く逃げようとしてるが、今更遅い。お前のお仕置きは既に決定事項だ。
「いいよ。ボウヤ」
「おう。んじゃま、景気よく……ビースト平原の彼方まで、飛んでいけーっ!」
そう言って俺は、勇者の剣の腹でドンカカのケツめがけてフルスイングし、
「ぐわーっ!」
という悲鳴を上げる奴を、地平線というバックスクリーンまでかっ飛ばした。名付けるなら【おしおきホームラン】ってところか。
これほどの高さから落ちたら、普通は死ぬだろうけど、そこはご心配なく。インパクトの瞬間に、強烈な風をドンカカの体に纏ったから、風がクッションとなって安全に着地できるはずだ。
あとは、ビースト平原の端からここまで無事で帰れるかだけど……まぁ大丈夫だろう。念の為に治療もしたし、あいつの小悪党特有のしぶとさと逃げ足ならなんとかなんだろ。
「ふぅ……よし! スッキリした!」
何はともあれ、会心の一打を打てたことで、俺のあいつに対するストレスは粉砕された。
後ろでまーちゃんや下っ端共が、『やりすぎ』って感じで軽く引いてる気がするが、気にしないでおこう。気にしたら負けだ。
そういうわけだから、喜べドンカカ。今回のことは、これでチャラにしといてやるよ。せいぜい魔物に襲われないように、気をつけて帰ってこいよ………………
勇は【おしおきホームラン】を会得した。
・【おしおきホームラン】の説明
【モード・ウインドエッジ】時のみ使用可能。敵単体を高確率で強制退場させる。
消費MP10。




