宝石が齎した祝福
そんだけ子分達から慕われてるってことなんだろうけど、それだけに、正直言ってどうしたらいいか対処に困っている。
本当なら、悪党の土下座なんて一銭の価値もねぇもんを見せられても、ちっとも心は痛まない。だが、これだけ大勢に土下座されたら、まるでこっちが悪者になったみたいで、すっげー印象が悪い。これで要求を突っぱねようもんなら尚更だろう。
かといって、宝石の効果がわかった以上、おいそれと渡してしまうのも、それはそれでなんだか惜しい。手放してもロッティとの差を縮められたから、十分恩恵には与ってんだけど、これを持ったまま旅を続けたら、魔王すらも楽に倒せそうな気がする。その機会を捨てるとなるとなぁ……
「なぁ、どうする? まーちゃん」
「どうすると言われましても……どうして、私に?」
「いや、そもそもその宝石はお前の所有物だし、あいつらからの実害だって、お前の方が被ってるだろ?」
「それは、そうですけど……」
急に選択を迫られ、まーちゃんは困惑する。
が、しばらくすると自分なりに考えがまとまったらしく、ドンカカに歩み寄って、徐にこう言った。
「……ドンカカさん。1つだけ、お願いがあります」
「な、なんだ?」
「もう2度と、弱い立場の人や罪の無い人を傷付けるようなことをするのはやめてください。マオさんやフォルトゥナハートに真摯に向き合えたように、これからの自分の行いにも真摯に向き合ってください。それが約束できるなら、お渡しします」
まーちゃんからの温情ともとれる返答に、ドンカカは拍子抜けしたらしくポカンとする。
「そ、そんなのでいいのか? 俺はてっきり『全財産よこせ』とか、もっとえげつねぇことを言われるもんかと……」
「そんなこと言いませんよ。その代わり……約束は守ってくださいね」
そう言いながら、まーちゃんが首からフォルトゥナハートを外して差し出すと、ドンカカは神様からの賜り物でも貰うかのように、フォルトゥナハートを丁重に受け取り、
「ありがとう。嬢ちゃん! 嬢ちゃんは本物の天使だ!」
と、これ以上ないぐらい感謝した。
確かにこんだけ慈悲深くてお人好しだと、その表現もあながち間違いではないかもしれねぇな。
「そんな、天使なんて……それより」
「あぁ、わかってる」
そう言うと、ドンカカは立ち上がり、フォルトゥナハートを手にマオの前まで移動し、向かい合った。
「その……悪ぃ。遅くなっちまったな……まぁ、なんだ。お互い色々あって、こんなに老けちまったが、結婚20年目のプレゼントってことで、受け取ってくれないか?」
こういうシチュエーションでプレゼントを渡すのに慣れていないのか、それとも長年の目的が達成されたことが嬉しすぎて舞い上がってるのか、ドンカカはたどたどしい口調でそう言うと、フォルトゥナハートを持った手を突き出した。
そんな旦那の姿に、意地悪っぽくフッと微笑んだマオは、
「ガチガチじゃないのさ。あんた」
と、指摘してからフォルトゥナハートを受け取ると、
「けど、嬉しいよ。ありがと」
って言って、軽く口づけをした。
その瞬間、塔の屋上は歓喜の渦に包まれる。
ドンカカは照れつつも満面の笑みを浮かべ、部下達は念願が叶った親分夫婦を心から祝福する。
その光景はまるで、色んな都合があって断念したが、子供や同僚のおかけでようやく挙げられた夫婦の結婚式のようだった。




