呆気ない幕切れ
その凶刃がとうとう、まーちゃんにまで。
「っ……! まーちゃんっ!」
俺はそう叫ぶと、まーちゃんを抱きかかえて、奴の斧をギリギリのところで回避した。
避けた弾みでまーちゃんの服の下から出てきた例の宝石に、頭をぶつけちまったのは痛かったが、それ以外で負ったダメージはない。
ったく、あのオッサン、ブチギレすぎてて見境なくなってるじゃねぇか。このままじゃ、嫁すらも殺しかねねぇぞ。
仕方ねぇ。こうなったら、もう1発くらわせて大人しくしてもらうしか……
と、思い、再び勇者の剣に意識を集中しかけたその時、さっきまで散々暴れてたドンカカの動きがピタッと止まった。
何だ? と思い様子を窺うと、怒りに染まっていた奴の目は血走っておらず、驚きと共に正気を取り戻しつつあるようだった。
(ババアは……生きてるよな? じゃあ、何が奴を正気に戻した?)
そう思ってると、ドンカカは別の意味で興奮状態になり、まーちゃんの方を指差すと、
「そ、それはまさしく……フォルトゥナハート……! お前、どこでそれを!?」
と、尋ねてきた。
その指し示す先にあったのは……例の騙されて買わされた宝石だった。
「え? これは、その……ポルトレイアの宝石商で――」
まーちゃんがそう言い終わるか終わらないかぐらいで、ドンカカは頭が地べたにめり込むんじゃないか? っていうぐらい土下座し、
「頼む! そいつを俺に譲ってくれっ!」
と、懇願した。
「はぁっ!? 何言ってんだオッサン! 散々俺らや人様に迷惑かけてといて、『宝石をよこせ』とか、おかしいだろ! どういう神経してんだ!?」
「それは重々わかってる! だが、俺にはどうしてもそれが必要なんだ! 後生の頼みだ! 頼むっ!」
立て続けに2回目の土下座。厚顔無恥を絵に描いたようなこいつが、敵に対して、恥を捨ててここまでするってことは、よっぽどの理由があるはずだ。
「……なんでそこまでするんだ? これって、ただの宝石だろ?」
「そいつは……ただの宝石じゃねぇんだ」
「え?」
そう聞き返す俺に、ドンカカはその宝石・フォルトゥナハートとそれを求めている理由について語り始めた…………




