勇者と盗賊の頂上決戦
荷物を手に、宝物庫を後にした俺達は、その足でドンカカがいるであろう塔のてっぺんへと向かった。
といっても、ほとんど【ガストブースト】で上ってったから、足というのは少々語弊があるかもしれないが。
ともかく、〇い彗星をも上回る4倍の速度で塔を駆け上がった俺達は、ついに最上層に到達した。
見張り台の役割も兼ねているのか、柵を含めて障害物は一切なく、ビースト平原を地平線の彼方まで見渡せる。
そんな景色のいい場所で、コソ泥夫婦は俺達を待ち構えていた。
「フッ、よく来たね。ボウヤ。どうやら、荷物は取り戻したみたいだね」
「あぁ。これで1つ目の目的は達せられた。後はてめぇらをボコボコにするだけだ」
そう言って俺は、2人に剣を向ける。
「へっ、そうこねぇとな。俺様もバシレイアでの借りを返さねぇとと思ってたところだ」
「そうかい」
「それはそうと……」
ドンカカはそう言うと、俺の隣にいたまーちゃんの方を向いて、ニタッと笑った。
「おや~? 誰かと思ったら、あん時売り飛ばされかけたドジで弱虫なお嬢ちゃんじゃねぇか。こんなところに何しに来た? また売られに来たのか? あぁ?」
「ち、違います。私は……」
「がはは。だいたいのことはマオから聞いたが、勇者の仲間になっても、その性格までは変わらなかったみてぇだな」
仲間に対する侮辱的な発言に、俺の目つきはだんだん険しくなっていく。
「おい、オッサン。何が言いてぇんだ?」
「なーに、大人の男として、ちょっとした忠告をと思ってな」
「忠告?」
「じゃあ聞くが、ボウズ。なんで俺様が、嬢ちゃんを仲間に加えず、売り飛ばそうとしてたかわかるか?」
「若い女は奴隷として需要があるからじゃないのか?」
そう答えると、ドンカカはチッチッチッといった感じで否定した。
「それもあるし、金が入り用だったってのもあるが、1番の理由は役に立たねぇからだ。戦闘に不向きな上、お人好しすぎて商人にも向かない。そんなお荷物を必要とするバカがどこにいる?」
自身が最も痛感している欠点を突かれ、まーちゃんはひどく落ち込む。
「要は、おめぇもさっさとこいつに見切りをつけて、新しい仲間を見つけた方がいいってこった。こいつは言うなりゃ、虎の威を借る狐。勇者であるお前と一緒ってだけで、自分も強くなった気でいるただの雑魚だ。そんな奴と一緒にいたって、得なんざありゃし……」
そう言いかける奴の言葉を断ち切るように、俺は剣と脇差を振り下ろし、咄嗟にガードした奴の斧とぶつけ合った。
これ以上あいつの言葉を聞くのは、反吐が出そうだったからだ。
「取り消せ。まーちゃんは雑魚でもなきゃ、虎の威を借る狐でもねぇ。何度も俺を支えてくれたかけがえのない相棒だ。それをてめぇの尺度で、勝手なことほざいてんじゃねぇよ」
マジギレする俺を目の当たりにして、まーちゃんの目に光が戻る。
対してドンカカは、迫力と怒気に少し気圧されてたみたいだが、すぐに闘志に火がついたらしく、戦士の顔になる。
「……ククク、いいねぇ。その殺気。そうこねぇと。だがな、ボウズ。俺様の相手ばかりしてていいのか? 横がガラ空きだぜ?」
ドンカカがそう言った直後、右肩に飛び蹴りをくらい、俺の体は横に吹っ飛んだ。
「あたいを無視するとは、いい度胸だね。ボウヤ」
「いつつ……なんつー蹴りしやがんだ。あのババア。旦那がゴリラなら嫁もゴリラかよ」
「言ったね! その言葉、後悔させてやるよ!」
ババアは怒りを露わにして殴りかかってきたが、それをまーちゃんがメイスで阻む。
「勇さんはやらせません」
「ハッ、弱いなりに意地でも見せようってのかい?」
「えぇ。こんな私でも、勇さんはパートナーだと言ってくれました。勇者の仲間として、勇さんのパートナーとして、その期待には応えなければなりません!」
そう言ってまーちゃんは、力任せにメイスを振り回した。
「コボからぶんどったメイスを使ってまで、我を通すってわけかい。若いだけあって、まだまだ青いね……が、そういうの嫌いじゃないよ。いいだろう。どっちが真に強い絆で結ばれた最強のコンビなのか、ここで白黒つけようじゃないのさ!」
「望むところです!」
その言葉をゴングに、俺とまーちゃんvsドンカカ夫婦のタッグマッチが始まった。




