宝物庫のコボルト
そうこうしている内に、塔の中層付近に到着した。
どうやら、ここは盗賊団の居住区らしく、そこかしこに扉があり、寝室やダイニング、風呂場やトイレ等に通じている。てことは当然、宝物庫もこの階層のどこかにあるはずだ。
俺とまーちゃんは手分けして、片っ端から扉を開けていくことにした。
すると、俺が2つ目の扉を開けたぐらいで、
「勇さん。こっちです」
と、俺を呼ぶまーちゃんの小さい声が聞こえた。
なんで大声で呼ばねぇんだ? と、疑問に思いながら行ってみると、そこには盗品と思われる金銀財宝や立派な装備類が保管されており、俺らの荷物も雑ではあるが、部屋の中心に放置されていた。ここが宝物庫で間違いないようだ。
そうとわかれば、今すぐにでも取りに行きてぇが、目の前にはそれらを守るように居座っている邪魔なコボルトが。まーちゃんが小声だったのは、これが理由か。
「Zzz……Zzz……」
よっぽどヒマだったのか、コボルトは得物であるメイスを抱き枕にして、グースカといびきをかいて眠っている。
(番犬失格だろ……こいつ)
柴犬みたいな顔面で気持ちよさそうにうたた寝しているそいつを見て、思わずツッコミを入れたくなるが、油断はできない。何かの拍子で目を覚ましたら、面倒くさいことになる。
てなわけで、俺とまーちゃんはなるべく音を立てないように、忍び足でそいつの横を通過し、荷物を回収した。
原案が書かれた紙に傷1つないところを見ると、あのババアの言っていたことは正かったようだ。
「よし。ずらかるぞ。まーちゃん」
「はい」
そう言って振り返ったその時、
「……ん、ん~……ふぁ~あ」
コボルトが目を覚ましやがった。最悪だ。あと1歩だったてのに……
いや、待てよ? もしかしてこいつ……
「ん~……? おめぇら……誰っすか?」
寝ぼけてる? なら、先手必勝だ。
俺は有無を言わさず、勇者の剣の柄でコボルトを殴り、気絶させた。
「起こして悪かったな。もう少し寝てろ」
「斬らなかったんですね。相手が魔物なのに」
「さっき戦ったゴンって奴、コボルトに育てられたんだろ? なら、こいつは、その家族かも知れねぇ。そんな奴を危害も加えられてねぇってのに、ただ間抜けで邪魔だからって理由だけで斬れっかよ」
「優しいんですね」
別に優しくなんかねぇよ。家族を失うことがどれほど辛いか、その意味を知ってるだけだ。それに、無秩序に殺しまくってたら、それは人斬りと一緒。俺はその一線を越えねぇように心がけてるだけだよ。
その証拠に、俺はこの後、まーちゃんの攻撃力アップという名目で、コボルトからメイスを奪い、食料庫から合成素材に使えそうということで小麦粉も盗んでいる。
え? 勇者が盗みなんかしていいのかって? いいんだよ。勇者ってのは得てして盗っ人でもあるからな。セーフだよ。セーフ。
小麦粉1袋とメイス(攻撃力20 素早さ-10 命中-6)を入手。
リュックと鞄を取り返した。




