謁見
勇者の剣が抜けたニュースは、瞬く間に都中に広まり、王の耳にも届いた。
待望の勇者の出現に、国王は一刻も早く、勇者と対面したくて、ウズウズしていたことだろう。
「陛下。勇者殿がお見えになりました」
「うむ。通せ」
命令を受けた従者に扉を開けてもらって、俺はラーサーに連れられる形で王と謁見した。
「ラーサー・K=シュヴァリエール二等兵です。例の者をお連れしました」
「う、うむ……」
そう言う王様の顔は、明らかに難色を示していた。
王様は俺のことを、よっぽど立派な人物だと思ってたんだろうな。出てきたのがこれだったせいか、あまりのイメージとの違いに、目が点になっている。
「……シュヴァリエール。ちと、ここへ。お前達もじゃ」
王様はそう言うと、家臣とラーサーを手招きし、自分の傍まで呼び寄せた。
「本当にあの者が抜いたのか!? どう見ても勇者というより、山賊じゃろ!」
「えぇ。とても信じられないでしょうが、間違いありません。現場に立ち会い、この目ではっきりと目撃したので」
「しかしじゃなぁ……」
おーい。おめぇらー。聞こえないように小声で話してるつもりかもしんねぇけど、丸聞こえだぞー。
「はぁ……もうよい。下がれ」
頭を抱えた王様にそう言われて、ラーサーと家臣が戻ってきた。どうやら、話し合いは終わったようだ。
「ゴホン。待たせたな。状況が状況なだけに、俄に信じ難くてな。真偽を確かめておった。すまん」
「あ、いえいえ」
よく言うよ。このジジイ。ま、顔のことは慣れっこだから、もういいけど。
「して、そなたの名は?」
「あぁ、広岡勇っていいます。初めまして」
そう答えると、王様は合点がいったらしく、小さく頷いた。
「ふむ……やはりそういう名か」
「やはりって、何か心当たりがあるんですか!?」
そう尋ねると、王様はこの世界と勇者について語り始めた。