女豹のような武闘家
前言撤回。確かにドラマチックな出会いを求めてはいた。が、こんな出会いをするぐらいなら、さっさと【ワープ】を覚えときゃよかった。
事の発端は今から1時間前。ロッティ達と別れて、新たな1歩を踏み出した後のこと。先のクラーケン戦で獲得資金も経験値もあいつらに持ってかれた俺達は、金欠で買える装備も道具も無いってことで、早々にポルトギルドを出発しようとしていた。
そこへ、
「おっと、ごめんよ」
という声と共に、ボブ系の髪型をした3~40歳ぐらいの武闘家らしき女がぶつかってきた。
「大丈夫ですか?」
「あぁ。すまないね。おや? あんたひょっとして、異世界から来たっていう噂の勇者様かい?」
「ま、まぁ、そんなとこです」
「ふ~ん……」
そう言いながら女は、まるで品定めでもしているような目で俺を見てくる。
中国系武道着から見える足と引き締まった体。女豹を思わせる鋭くも大きな目と悪くない顔立ち。それらによって醸し出された色気が凄まじく、観察されてるようなこの状況と相まって、平静を保つのに必死だった。
「な、なんすか?」
「いや、旦那からあんたのことを聞いててね。どんな男かと思ったら、なかなかどうして、いい男じゃないか」
初めて容姿について褒められた。それだけで思わず、感涙しそうになる。
今思えば、この時から違和感というか、背後から何かが近づいてくる気配があった気がするが、褒められて舞い上がっていた俺は、あわよくば、こんないい人をどうにか仲間に入れることはできないかということしか、頭になかった。
「そ、そうですか? あんまり褒められたことないんで、すごく光栄です」
「そうかい。そりゃもったいない。顔だけなら、うちの旦那に勝ってるってのに」
「…………あれ?」
会話中に何らかの異変が起きたらしく、それに見舞われたまーちゃんは、途端に挙動不審になる。
「旦那って、結婚されてるんですか?」
「あぁ。もう20年になるよ。といっても、幼馴染み同士だったから、その頃からの付き合いも入れると、生まれてからずっとかな?」
「あれ? あれあれ!? そんな……さっきまで持ってたのに……」
明らかにテンパり、見るからに落ち着かない様子で何かを探していたまーちゃんだったが、どうやら目当ての物が異変の正体と一緒にあったらしく、そこに目が留まる。
「あ。そういや、まだ名乗ってなかったね。あたいはマオ。見ての通りの武闘家さ」
「へー。俺の世界にも『マオ』って名前の人が大勢いるんですよ。もしかしてマオさんも俺と同じ世界から?」
「…………さん」
「いや。先祖はそうらしいけど、あまりにも大昔の人だからね。あたいには微々たる程度しか流れちゃいないよ」
「あの、勇さん」
「そうですか……」
「勇さん!」
その大声で、ようやくまーちゃんの訴えが耳に届いた。
「なんだよ。まーちゃん。さっきからどうした?」
「あ、あれ……」
そう言うと、まーちゃんは、ある一点を指差した。




