新たな一歩
「よし。じゃあ、俺らも行くか」
「はい。勇者様」
そう言って歩き出したが、いつもの呼び方に思うところがあり、俺はピタッと足を止める。
「あのさ、まーちゃん」
「はい? なんでしょう?」
「その『勇者様』っての、やめてくんねぇか?」
「え?」
突発的な要求に、まーちゃんは固まる。
「いや、まーちゃんが認めてくれんのは素直に嬉しいけど、俺はまだ『勇者』って呼ばれるほど立派じゃない。今回のことでそれを嫌ってほど痛感した。だから、俺が世間的に勇者と認められるその日まで、できればそう呼ぶのはやめてほしい」
「急にそう言われましても……」
「なんだっていいんだ。あだ名でもなんでも。あ、けど、名字はナシな。仲間なのに、今更『広岡さん』なんて他人行儀で呼ばれたら、距離感じるから」
そう言われて、まーちゃんはほとほと困っていたが、しばらくしてから、
「で、でしたら、その……ゆ、勇……さん、で……」
と、意を決したらしく、慣れない感じで、俺の名前を呼んだ。
「おう。それでいいよ。これからもよろしくな」
そう言いながら、勇気を讃える意味を込めて頭を撫でてやると、不敬を買わないかという不安から解放されたのか、オドオドしていたまーちゃんの表情がぱぁっと明るくなっていく。
その顔がまた反則レベルにかわいくてな、思わず胸がキュンとしてしまう。
(っと、いかんいかん。10こも年下の仲間に何キュンとしてんだ俺は。んな関係になったら、勇者としても人間としてもアウトだろうが)
そう思い、湧き上がった邪な感情を理性で抑えつけた俺は、1回咳払いし、まーちゃんを連れて新たな一歩を踏み出した。
目指すは首都・ギルディア。
ロッティと違い、こっちには【ワープ】とかといった便利な魔法はない。
けど、それがどうした。会得してないんなら、その日が来るまで歩き続ければいい。目的ばっかを追いかけるせっかちな旅より、そっちの方がずっと気楽でドラマチックな出会いもあるし、得るものも大きいはずだ。
そうポジティブに捉えるようになったからかな? なんだかいつもより、足取りが軽い気がする………………




