私の勇者はあなたです
って、自己完結しかかってたのに、腕が全然前に進まねぇ。それどころか、強い力でグッと下に押さえつけられてる。
こんな身勝手なエンディングを望んでいない奴が幕引きを阻んでいたんだ。
「そんなのダメ……ダメです!」
そう訴えかけるまーちゃんの両腕は、剣を渡すまいと俺の腕をロックしている。
「お前……! 離せ。もう決めたことなんだ」
そう言っても、まーちゃんは何度も首を横に振り、頑として拒む。
「……それが、勇者様が本心で選んだことなら、辛いですけど、私も受け入れます。ですが、今は聞くわけにはいきません」
「なんでだ?」
「だって勇者様は、自分の心に嘘をついていますから!」
思わぬ指摘に、俺は多少ムッとし、
「俺が嘘を? 何言ってんだ。俺がいったい、いつ嘘をついたってんだ?」
と、聞いた。
すると、まーちゃんは俺の倍以上の怒りを滲ませて、まくし立ててくる。
「でしたら、何故、決断を下すまでに4日もかかったんですか? 劣等感や敗北感だけが理由なら、あの場で即決していても、おかしくなかったでしょう? それに……先程、勇者様は『夢は終わった』と仰っていましたが、それなら、どうしてまだその鞄を持っているんですか? 必要ないでしょう?」
そう言ってまーちゃんは、俺の鞄を指差した。ゲームクリエーターになるという夢がギッシリと詰まり、今なお手放さずに持っている鞄を。
「そ、それは……この世界でゲームを広めんのもアリかなと思って、一応……」
目を逸らしながら誤魔化すようにそう言うが、まーちゃんは俺の心を看破しているらしく、キッパリと否定する。
「いいえ。違います。そんな理由だけで持っているなんて、あまりにも不確実すぎます」
そう言われては、反論の余地もない。
「本当は、勇者様自身が1番わかっているはずです。自分の本心が。元の世界に帰って夢を叶えたいという心からの気持ちが」
そう言われて、俺は自分の心に気付かされた。
まーちゃんの言うとおりだ。俺はこの4日間、ずっと葛藤してたんだ。
俺では世界を救うことなんてできない。俺なんかよりロッティの方が英雄になれる。勇者の剣もロッティが使用者であるべきだ。
だけど、それを認め勇者をやめたら、俺は元の世界に帰ることも夢を叶えることも放棄することになる。それは、先が見えなさすぎて、すごく怖い。
そのことに悩み苦しんでいく内に、俺の心は疲弊していき、とうとう、
(ロッティが魔王を討ってくれたら、俺はお役御免ってことで、帰れるんじゃね?)
なんて、自分の心に蓋をして、他力本願になってしまった結果、あんな答えを出してしまったんだ。
今思えば、俺は勇者の責務だけでなく、自分の心からも目を背けていたんだ。それに気付かせてくれたまーちゃんには本当に感謝してる。
けど……
「……あぁ、今わかったよ……」
「勇者様……」
「けど、それとこれとは話が別だ。人格的にも力量的にも、勇者に相応しいのはロッティの方だ。俺なんかが勇者の剣を持ってたって……」
直面した現実は避けられない。またも抱いた劣等感から卑屈になると、まーちゃんは腕のロックを解いて俺の手を優しく握り、
「関係ありません。たとえ、全ての人がマリアさんを勇者だと認めても、私の勇者はあなたです。それは今までもこれからも変わりません」
と、言ってくれた。
その言葉だけで、なんだか心が救われた気がする。まーちゃんのおかげで、完全に目が覚めたわ。
プリス・ハイネス(Lv36)のステータス
HP……45
MP……102
物理攻撃力……39(装備による加算あり)
物理防御力……50(同上)
魔法攻撃力……105(同上)
魔法防御力……108(同上)
素早さ……32
命中……34
運……62(同上)
・装備
ライトワンド(物理攻撃力2 魔法攻撃力10)
光のベール(物理防御力8 魔法防御力25 状態異常発生率3割DOWNの効果付与)
聖女の修道服(物理防御力12 魔法防御力30)
修道女の靴(物理防御力1)
聖女のロザリオ(魔法攻撃力5 魔法防御力5 運10)
・術……【ヒール】 【シャイン】




