vs.クラーケン
クラーケンの足のせいで救助艇も出せず、船内がパニックになる中、俺達とロッティのパーティは、船を守るために奮戦する。
あっちの戦況がどうなってるかは、皆目見当もつかねぇが、少なくともこっちよりはマシだと信じたい。
そう思いたくなるぐらい、こっちは苦戦している。
というのも、奴の手数の多さもさることながら、足が予想以上に硬くてヌルッとしてる上、ウネウネと艶めかしく動くせいで、直撃させることができず、ダメージが思うように通らない。
加えて、運がいいのか悪いのか、俺とまーちゃんがいる甲板が、クラーケンと正面から向かい合う位置らしく、海面から顔を出した蛸とも烏賊ともとれる面をしたあいつの口から、真っ黒い墨がハイドロポンプのように高圧噴射される。あんなのをまともにくらえば、RPGでいう暗闇状態だけじゃ済まねぇ。顔が吹っ飛ぶか、土手っ腹に風穴が開くことになるだろう。
だが、こっちだって、黙ってやられるつもりはない。この手の敵は、あの洞窟でもう慣れている。要はあの草のバケモンと一緒で、本体、すなわち頭をぶちのめしゃいい話だ。
問題は、そこまでどうやっていくかだ。ずっと海から頭が出てるわけじゃねぇし、出てきたところで、甲板からじゃ距離がある。まーちゃんが調合してくれる爆弾に頼るか、足を踏み台にして接近するかしか方法がない。
でも、踏み台にするにしても、このヌメついた足じゃな……海に落ちたら、それこそジ・エンドな気もするし……
(あー! こんなことなら、鳶職にでもなっときゃよかったー! そしたらこんな足なんか、ヒョヒョイって……って、面接にすら受かったことねぇ奴が言うセリフじゃねぇか)
なんて思いながら頭を抱えていると、横からクラーケンの足に殴り飛ばされた。
(っつー……なんて重い一撃だ。こりゃ、何発も受けてらんねぇな)
こうなったら、考えんのは後だ。とにかく、奴の頭を攻撃しまくろう。そうと決まったら……
「まーちゃん! できたか!?」
「は、はい!」
「よしっ! いけーっ!」
俺のGoサインと共に、まーちゃんの手から爆弾が投擲され、クラーケンの鼻先あたりで炸裂する。
轟音と衝撃のデカさから見て、破壊力は十二分にあるはず。これなら少しは効いただろう。
そう思ったが、徐々に煙が晴れて見えてきたあいつの顔は、グチャグチャどころか掠り傷1つついていなかった。爆発によるダメージを軟体ボディーが受け流したのか? だとしたら、こいつは相当の難敵だぞ。
「……だったら、これならどうだ!」
ちょっぴりヤケ気味になった俺はそう言うと、勇者の剣と脇差に炎を纏い、墨を吐こうと都合良く顔を近付けてきたそいつの眉間に、【フレイムクロス】を全力で叩き込んだ。
まーちゃんの爆弾に勝る高火力だ。流石にこれは効いたはず。そのまま茹で蛸になっちまえ。




