王道勇者
その時、
「てめぇ、このロリコン野郎! プリスから離れやがれーっ!」
という声と共に、重そうな装備で武装した男が走ってきて、躊躇なく大剣を振り下ろしてきた。
飛び退いて避けれたからいいものの、危うく真っ二つにされるところだ。
「あっぶねぇ……いきなりなにすんだ!」
そうクレームをつけるが、
「今だ! メイ爺!」
「わかっておる」
と、俺のことなんか無視して、奴とその仲間である魔術師風のジジイはプリスの手を引き、彼女を保護する。
どうやらこいつらが、この子のお仲間らしい。ったく、ずいぶんと血の気の多い仲間だな。おい。
「大丈夫か? プリス。ひどいことをされんかったか?」
「え、えぇ」
それを聞いて胸を撫で下ろすと、野郎共が俺の方をギロリと睨みつけてくる。
「おぬし……いくらプリスがプリティーじゃからってな、やっていいことと悪いことがあるじゃろ」
「いや、俺は何も……」
「問答無用だ! 神妙にしろ! このド悪党!」
おい、てめぇら。ちったぁ人の話を聞きやがれ。って、無理か。こいつら、頭に血が上りすぎてて、聞く耳すら持っちゃくれねぇ。
どうにかプリスの口から、誤解を解いてくんねぇかな。それか、良識のある保護者が出てきてくれれば……
と、思ってると、
「メイ爺ー、ケンー。そっちは見つかった?」
という声がして、早とちり野郎共とプリスの仲間が現れた。
二十歳前後と思われるそいつは、中性的かつ端正な顔立ちをしており、クセの無い黒のショートヘアーと相まって、とてもボーイッシュな見た目をしていた。印象としては、可愛いというより、凛々しいと言った方が正しいのかもしれない。
そんな、ともすれば美男子と間違われかねない彼女が、辛うじて女だとわかったのは、白いマントやボトムス、ブーツといった露出や女らしさを隠そうとする装備とは対照的に、少し丈が短く、露出度の高いベアトップワンピースのような青い服を身に纏っていることや、それによって、大きくて形のいい胸が強調されていたからだ。
その見た目とのギャップも然る事ながら、某RPGの同人作品に出てきかねない出で立ちに、俺はすぐにピンときた。
「もしかして、お前……」
「ん? いかにも。ボクはマリアロッテ・ジャンダルク。みんなからは『マリア』とか『ロッティ』って呼ばれてる。一応、精霊の主・エルフィニア様から啓示を受けたインペリアの勇者だよ」
やっぱりそうか! その見た目は完全にそうだと思った! てか、他にも勇者がいたのかよ!
「君達がプリスを見つけてくれたんだ? ありがとう。助かったよ」
そう礼を言って、ロッティは俺達に握手を求めようとしたが、ケンが強引に割って入ってきた。
「待て待て、ロッティ! そいつに礼なんかすんな。そいつはプリスを連れ去ろうとした悪党だぞ」
「そうなの?」
「そうじゃ! そうに決まっておる! 此奴の顔をよく見てみよ! これが善人の顔だと思うか? どう見ても悪人の面をしておるじゃろう」
こいつら、好き放題言いやがって……人を見かけで判断すんなっつーの。
てな具合に、仲間達からの意見を受けて、ロッティは真実がわからず少々混乱しているようだったが、あれを見たことで、ようやくわかってくれたようだ。
「……待って。君の腰に差してる剣ってもしかして……」
「あぁ。ご名答。勇者の剣だ」
それを聞いたロッティの仲間達は、よほど信じられないらしく、ざわついた。
「やっぱり! ということは、君がエルフィニア様が話していた異世界の勇者なんだね?」
「エルフィニアって……あいつから俺のことを聞いてたのか!?」
驚く俺の問いに、ロッティは素直に頷く。
あのアホ精霊。『期待している』とか言っときながら、ロッティばっか贔屓しやがって。ますます不公平じゃねぇか。




