出港と迷子
午後12時半。ギルディア大陸に向けて定刻通り港を出た船。その船内に俺達もいる。ちょっとばかし冷や汗もんだったが、なんとか金が足りてよかったと、少しホッとしている。
なんにしても、これでバシレイアともお別れか。次に来る時までに少しでも国が良くなってりゃいいけど、そこはラーサーや姫さんの活躍に期待ってところか…………
出港からおよそ1時間後。初の帆船での船旅にテンションが上がっていた俺は、船内を散策した後、甲板で水平線をボーッと眺めていた。
また一文無しとなってしまったが、人生初の帆船に乗れたこと。行商人に装備を買い取ってもらったこと。そして何より、船賃がローカル線並みに激安だったことに、俺は心から感謝している。
まーちゃんが言うには、人々の足である船や馬車といった乗り物は、公共交通機関としてかなり割安になっているらしい。代わりに、船内での食事が有料だったり、荷物の運搬にえげつない金額を取られたりするのだが。
(ま、今の俺らには関係ねぇか。デケぇ荷物もねぇし、食料も少なからずある。最悪、船の上から釣りでもすりゃ事足りるし)
頬を撫でる潮風を感じながら、俺は楽天的にそう考えていた。
ギルディアの玄関口・ポルトギルドに到着するまで約2週間。それまでは優雅な船旅ってとこか。こうも青く広い海を見てると、なんだか久々に童謡の『海』でも口遊んでみたくなってきたのは、俺だけだろうか?
って、思っていると、部屋で荷物の整理をしていたまーちゃんが、俺を見つけて声をかけてきた。
「あ、勇者様。こんなところにいらしたのですね」
見たところ、もう落ち込んではないみたいだ。よかった。まーちゃんの性格上、延々引きずり続けてもおかしくねぇからな。そこはまぁ、良しとしよう。
問題は……俺の顔を見るなり、まーちゃんの横で小動物のように震え上がっているセミロングの金髪をした少女だ。見た感じまーちゃんと同い年ぐらいのようだが、修道服に着られてる感があるこの子は、いったいどこの誰だ?
「その子は?」
「あぁ、先程知り合った方で、プリスさんというそうです。なんでも船内で仲間とはぐれてしまったみたいで……」
なるほどね。旅のシスターが迷子になったから、人探しに協力してたのか。お人好しのまーちゃんらしいな。
「そっか。なら、俺も手伝うよ」
「いいんですか? ありがとうございます」
礼には及ばねぇって。相変わらず、仲間相手にも律儀な奴だな。
さて、それじゃあ手始めにどうすっかな。この船に船内放送なんて設備があるわけないだろうし、かといって広い船内を3人で探し回るってのも効率が……
「とりあえず、仲間の特徴を教えてくれるか?」
「は、はい……えっと……」
そう言ってプリスは、仲間について話そうとした。




