清廉なる姫君
てなやりとりをしていると、
「おやめなさい!」
という制止を求める声が聞こえた。
なんだ? と思い、振り向くと、そこには兵隊や世話係といったお供を連れた見るからに高貴な女がいた。
歳は俺よりちょい上ぐらいで、洋服より和服、それも着物や十二単が似合いそうな感じの整った顔をしている。
「か弱い少女を虐めるなんて、そんな狼藉が許されると思っているのですか?」
うわっちゃー……やっぱそう思われてんのか。まぁ、絵面的にはそう見られてもおかしくねぇもんな。おおかた、俺がまーちゃんに説教してるとこを見た誰かが知らせたってとこだろう。
はぁ……もう慣れた展開とはいえ、ノーストレスとはいかねぇんだよなぁ……これ。
とりあえず言葉で説明したが、やっぱり信じてはもらえない。まーちゃんにバトンタッチしても、それは変わらず、『脅迫して言わせてる』とまで言われる始末。
悩んだ末に俺は、剣や槍を向ける兵士やブーイングしてくる民衆と女の前で、勇者の剣を黄門様の印籠のように掲げ、自分が勇者だということを示した。
この世界の勇者に対する絶対的な信頼を利用した方法だ。こんなこと、就活難民だった頃の俺じゃ、到底できなかっただろう。
数分後。懇切丁寧に説明したことで、兵士達は警戒を解き、野次馬がいなくなったところで、女は誤解していたことを詫びた。
「ごめんなさい。早とちりしてしまって。まさか勇者様一行だったとは」
「気にしないでください。こういうことには慣れてますから」
「そうは言いましても……お詫びに、騙し取られたお金はこちらで補填させてください」
「いや、いいですよ。会ったばかりの人にそこまでされんのは、アレですし」
そんな問答を繰り返している間に、バシレイア国民であるまーちゃんは、彼女が何者なのか気付いたようだ。
「あの、失礼ですけど、あなたは……」
「えぇ。あなたの想像しているとおりです」
「やっぱり!」
驚きを見せるまーちゃんの横で『?』を浮かべていると、その人は、
「あ、そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。初めまして。私はティティ・アセリア=バシレイアと申します。以後、お見知り置きを」
と、名乗った。思った通り貴族らしい長ったらしい名前だな……
って、バシレイア? 待て待て待て。そんな名字が付くのってだいたい……
「ひょっとして……お姫様?」
恐る恐るそう聞き返すと、姫さんは優しい笑みで頷いた。
おいおい冗談だろ? 普通姫様との出会いって、城の段階で王様と一緒にいるか、魔王に連れ去られてて、救出した時に初めて会うかの2択だろ! まぁ、途中の町で犬にされてるっていう一部例外もあるけども。
そのお姫様が、何のイベントも依頼もなく、こんな町中でポッと出てくるとか、唐突すぎて頭の処理が追いつかねぇよ。




