必要な狡賢さ
「……それで、自分の分が買えなくなってしまったので、仕方なく勇者様が使っていた木刀と私のダガーを売り、なんとかポイズンダガーを……」
予想通りというか、なんというか……心配が直撃した俺は、頭を抱えた。
「はぁ……だから言わんこっちゃない……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
そう言って、まーちゃんは平謝りをするが、こんな調子では、また騙されて痛い目に遭いかねない。
俺は心を鬼にして、説教することにした。
「あのなぁ……本当にその宝石の力が本物なら、店が潰れかけてると思うか? つーか9割引なんて、閉店セールにしたって度が過ぎてんだろ。だいたい『幸運が舞い込んでくる』とか『お金持ちになれる』なんて謳い文句のつく奴は、俺の世界でもそうだけど、大抵が眉唾もんだ」
「ということは……」
「あぁ。完全に詐欺られたな。今頃、そいつは、お前のことをせせら笑いながら金を数えてるか、とんずらぶっこいてるだろうな」
そう言われて、責任とショックを感じ、俯くまーちゃんの頭に俺は、手を置いた。
「いいか? まーちゃん。確かにお人好しなのはいいことだ。信頼第一の商人にとって、それは必要不可欠な要素だと思う。けどな、バカ正直でやっていけるほど、甘い世界じゃない。時には人を疑うことと、非情に徹しなきゃならない場面があるってこともわかるべきだ」
「お客様を疑え、と?」
「あぁ。でなきゃ、一生鴨られて破産に追い込まれることになるぞ。そうなりたくなきゃ、そういう狡賢さも必要だってことを忘れんな」
俺がそう言うと、まーちゃんは力強く頷いた。どうやら俺の教えが胸に刺さったみたいだ。これで少しは商人として成長してくれりゃいいが……
って、面接100連敗の男が何言ってんだか。




