お人好し故の失敗
2時間後。情報収集を済ませた俺は、港の入口付近で、まーちゃんが来るのを待っていた。
俺の方はというと、魔王関連の情報は収穫ゼロ。その代わり、ギルディアに関する情報は山ほど聞けたから、まずまずといったところか。
(とりあえず、金と言語の心配はしなくて済みそうだ)
そう思い、一安心しながら船や人波を眺めて時間を潰していると、まーちゃんが買い出しを終えて合流した。
が、何やら様子がおかしい。
「すみません……遅くなりました」
「おう。遅かったな。まーちゃ……」
そう言いかけたところで、その正体が何なのかわかった俺は、怪訝な表情を浮かべた。
そりゃそうもなるよ。見たところ、俺の分は買ってきてくれたみたいだが、どっからどう見てもまーちゃんの装備に変化がない。せいぜいダガーがポイズンダガーっていう毒付きのダガーに変わったぐらいか。
極めつけは、別行動をとる前にはなかった青と黄色の輝きを放つ謎の宝石が、リュックからはみ出していること。
以上のことから、大体の状況を察した俺は、申し訳なさそうにションボリしているまーちゃんの前に立つと、その愛らしい両頬をムニっと引っ張りながら、怒気を込めて尋ねた。
「おい。これはどういうことだ? 説明しろ」
「う~、ご、ごめんなさい。実は……」
まーちゃんはそう言うと、頬を引っ張られたまま何があったのか語り始めた。
遡ること約1時間前。まーちゃんは俺の防具類を買い揃えるために、まず男物の防具屋に入り、俺の分の買い物を済ませていた。
この後、本来なら自分の装備と調合素材と食材を買いに行くつもりだったらしいのだが、店を出たところで、
「そこの嬢ちゃん。ちょいとうちの店に寄ってかねぇか?」
と、知らない男に呼び止められたそうだ。
そいつは、防具屋の隣でアクセサリー屋をしている露天商と名乗ってはいたが、店もオッサンも、綺麗でオシャレな外観と風貌とはお世辞にも言えなかったそうだ。
で、その胡散臭いオッサンが、強引にまーちゃんを店先へと誘導し、売りつけてきたのが例の宝石だ。
まーちゃんも最初は、金銭面や怪しさから、買い渋っていたそうだが、この宝石には不思議な力があり、幸運と財を呼び込む力があるだとか、1ヶ月前にとある貴族が没落し、その時に売りに出された貴重な代物だとか、即決してくれたら白金貨9枚のところを金貨9枚で売るだとか、散々言われたらしい。
しまいには、最近イケメンや美女が経営するオシャレなライバル店が近所に続々とできていることに触れると、
「俺んとこは外観も見窄らしいし、品揃えも他と比べてよくない。このまま売り上げが減り続けたら、路頭に迷うことになってしまう。頼む! どうか買ってくれ! これさえ売れれば、今月はどうにか凌げるんだ!」
と、いい歳こいて泣き落としまでしてきた。
結局、まーちゃんはそのあまりの無惨さに同情してしまい、それでこの人が助かるんならと、とうとうその宝石を買ってしまったんだそうだ…………




