魔王の真実
予想通り魔王は過去に2度、勇者の手にかかって倒されていた。
最初に魔王が倒されたのは、今から970年前。その次は580年前で、いずれも日本では名のある武将だったらしい。
彼らはそれを果たしたことで、無事元の世界に帰ることができたのだが、その尽力も虚しく、10年もしない内にまた次の魔王が現れたそうだ。
それを聞いて、俺は愕然とした。もし、それが真実で、魔王が際限なく現れるのなら、俺がやろうとしてることは、この世界にとって、単なる気休めでしかないんじゃないか……と。
「そうはさせません。それを食い止めるために、あなたを呼んだのですから」
その言葉を、俺は素直に受け取ることができなかった。
「冗談はよせ。俺は偉人でもなけりゃ武将でもねぇ。ついこないだまで、職にも就けなかったただの一般市民だぞ」
「それぐらいわかってます。あなたが人生負け組のプー太郎だってことは」
そこは普通『そんなことありせんよ』とか言って、フォローするところだろ。追い討ちかけてどうすんだ。殺すぞ。クソ精霊。
「ですが、あなたには歴代勇者に負けないほどの想像力と反射神経があります。先程、自分で仰ってましたよね? 『勇者の剣はイメージによって属性攻撃ができる』と。まさにその通りです。その剣を活かすも殺すも、あなたの想像力と実践経験次第。ですから、類い稀なる想像力を持っているあなたに、これでも期待しているんです」
なんだ。そう思ってたのか。なら、最初っからそう言やいいのに。
「そ、そうか。なら、その期待に応えるためにも、早ぇとこ魔王をボコボコにしねぇとな」
「お願いします。私もできる限りのサポートはしますから」
サポート、ねぇ……つっても、こいつができることといったら、どこぞの仏みたいに次の目的地をお知らせすることしかできない気が……
待てよ……? その手があった!
「じゃ、早速で悪ぃんだけど……魔王ってどこにいるんだ? 教えてくれよ」
まどろっこしいことは抜きにして、直接乗り込みゃいいんだ。我ながらナイスアイデアだ!
って、思ったのも束の間、エルフィニアは憐れみと蔑みと嘲りが混ざったような顔をし、
「正気ですか? あなた、ご自身のレベルが今いくつかご存知ですか? 7ですよ? 7。最初の中ボス戦の適正レベルぐらいですよ? そんなレベルで魔王に挑むなんて、自殺行為以外何物でもありません。顔を洗って出直してきてください」
と、マシンガンのように罵倒を浴びせてきた。
って、おい! そこまで言うか!? 仮にも精霊の主なんだから、ちったぁ温情ぐらい持てよ! てか、レベルの話も、ゲームみたいなステータスが出ないこの世界じゃ、立派なメタ発言だからな! そこんとこわかってんのか?
「じゃあ、どうしろってんだよ?」
「そうですね……直接居場所を教えるのは、あなたの為になりませんし、かといって、見当違いのところに行かれても、それはそれで…………」
そう言って思案してる内に、エルフィニアの中である考えが浮かんだようだ。
「でしたら、ギルディア大陸へ向かわれてはいかがでしょう?」
「ギルディア? あぁ、この世界の南に位置する大陸だったか」
「えぇ。そこの首都・ギルディアでしたら、各方面から様々な情報が集まるので、魔王の居場所についてもわかるかと」
確かに一理あるな。無闇矢鱈に歩き回るよか、そっちの方がよっぽど合理的だ。首都に着くまでの間に何度か魔物と出くわすだろうから、経験も積めるだろうし。
「わかった。そうするよ」
「頼みましたよ。この世界の命運はあなたにかかっているのですから。それでは、頑張ってくださいね。顔と口だけでなく、頭も悪い勇者様」
エルフィニアはそう言うと、柔らかい光の粒と化して、スーッと消えていった。
あいつ、幻術か何かで作った自分の分身を使って、接触してきたのか。どうやら、まだ面と向かって会うつもりはないらしい。
まぁ、そんなことより……
「一言余計なんだよメタ精霊っ! 『頭が悪い』とか、てめぇにだけは言われたくねぇよ!」
と、奴がいなくなった空間に向かって怒鳴り散らした。そんな俺の姿が、ただの酔っ払いか、気が触れたか異常者に見えたんだろう。ラーサーや村人達はドン引きし、調薬を終えて合流してきたまーちゃんには、ものっすごく心配され、落ち着くよう言われた。
(さてはあいつ、こないだ中指立てたことを根に持って、仕返しに来ただけだな? よーし、上等だ。そっちがそのつもりなら、こっちも応戦してやる!)
そう思った俺は、どこかで見てるであろうあいつに向かって、中指を立て、あっかんべーと舌を出した。
ガキっぽいと笑いたきゃ笑え。相手が幼稚なんだから、それ相応のやり方をして何が悪い………………




