再臨
なんて強がりながら、地ビールを味わっていると、背後から女の声がした。
「どうですか? 勇者として、人の役に立った気持ちは」
「……正直、忘れてたよ。人に感謝されるのって、こんなにいいものだったんだな」
柵の向こうは村の外だから、絶対に村娘ではない。それに、この声……聞き覚えがある。
が、ここは敢えて一旦スルーし、話を続けよう。
「そうでしょう? 人を助けることは素晴らしいことなんです。人相が悪くて避けられ続けてきたあなたからすれば、幼少期以来だとは思いますが」
「まぁな……で? 何しに来たんだ? メタ精霊」
「むぅ、折角忙しい中、会いに来てあげたというのに、なんなんですか? その言い草は。あと、メタ精霊はやめてください。失礼ですよ」
そこにいたのは、エルフィニアだった。
「うっせぇ。お前なんかそれで十分だろ」
「相変わらずの態度ですね。私が何かしました?」
答える気にもならねぇ。てめぇの胸に聞きやがれ。
「まぁ、それはそれとして……勇者の剣の力を解放することができたようですね。よくできました。えらいですね」
『よくできました』って、俺は幼稚園児か。
「まぁな。ってか、やっぱ知ってたのか」
「えぇ。エネルギーの残滓がオーラとなって、勇者の剣を覆ってますから」
「そうかい。じゃあ今後も、イメージさえすれば、色んな属性攻撃ができんのか?」
「できることはできますが、そのためにはまず、経験値を積んでいただかないと。火属性は言うなれば初歩の初歩。多くの属性を使いこなし、複数属性の斬撃ができるようになるのは、まだまだ先かと」
マジか。あんだけの威力があって、まだ初歩の初歩かよ。思った以上に末恐ろしいな。勇者の剣。
「もっとも先代勇者様は、属性を補助に使う程度で、ほとんどそれに頼ることなく、腕っ節一つで魔王と戦っておられましたが」
そいつはすげぇ。俺なんか火を使って、やっとこさあいつを倒せたのに、ほぼ無属性で魔王に挑めるレベルとか、ほんとに人か?
そう率直に思ったところで、王と謁見した時のことを思い出した俺の脳裏に、ある疑問が浮かんだ。
「ん? そういや、エルフィニア。この世界に魔王が現れたのって、数千年前からだったよな?」
「えぇ」
「だけど、あの王様は『魔王が再臨してから数百年』って言ってた。それってつまり、魔王は最低でも一回は倒されたってことだよな? なのにまだいるって、どういうことなんだ?」
そう尋ねると、エルフィニアは嬉しそうな顔をした。
「いい質問ですねぇ。意外と賢いじゃないですか」
「意外とは余計だ。あと、そのセリフ。モノマネだとしたら、全然似てねぇからな」
「もう。精霊の主のちょっとした茶目っ気じゃないですか」
「そういうのはいいから、さっさと答えろ」
そう言われると、エルフィニアはふて腐れながらも、魔王について答えてくれた。




