ラーサーの父親
襲ってくるザコモンスターを蹴散らしたり、宝箱や岩壁から採集を繰り返す内に、アイテムとか金、調合素材でパンパンになっていくまーちゃんのリュック。
一見何の変哲もない石ころを使って、いったい何を生み出すんだろう? とか、袋をどのタイミングで整理してもらったらいいか? とか、膨れ上がるリュックを目にして、俺は色々と想像や思案をしていた。
が、それら全てが無駄だと言わんばかりに、奴はどんどん先へと進んでいく。
(故郷のピンチだから、急ぎたい気持ちはわかるけどよ。何もあそこまでツンケンしなくてもいいんじゃねぇ?)
その気持ちはまーちゃんも同じ気持ちだったようだ。奴に歩み寄り、声をかけた。
「あの、ラーサーさん」
「何だい?」
「さっきの言葉、どういう意味ですか? 何故そこまで、勇者様のことを?」
そう聞かれて、向こうも思うところがあったらしく、ラーサーは少し押し黙ってから、
「似てるんだ。亡くなった父と」
と、答えた。
「親父さんと?」
俺が聞き返すと、ラーサーは自分の親父さんについて語ってくれた。
ラーサーの父親で前村長・アスロット・K=シュバリエールは、後先考えない上、現実も見えていない楽天家だったそうだ。
基本的に、思いつきと行き当たりばったりで生きてきた人らしく、村人が生活苦になったと知れば、誰にも相談することなく税を免除し、目玉になるものが村にないと知れば、私財を擲って、温泉や名産品等といった事業に手をつけた挙げ句、失敗する。
そんな迷惑をかける度に、国王やラーサーから大目玉を食らっていたのだが、毎度決まって『まぁ、なんとかなるだろ』の一言で片付け、全く意に介していなかったようだ。
「そいつは、なかなか強烈な親父さんだな」
「でしょう? よくあれで村長になれたと、つくづく思いますよ」
「まぁな。けど、それだけ人望もあったってことだろ?」
「それは、認めざるを得ませんね」
「だろ? それに、何も考えて無いってのも違うんじゃねぇか? 今の話を聞いた限りじゃ、親父さんは親父さんなりに、村のことを考えて行動してる気がするぞ。裏目には出てたけど」
そう弁護すると、ラーサーは嫌悪感と怒りを滲ませながら、
「村のことを……ね。その父のせいでこんなことになったのに、ですか?」
と、答えた。その言葉に俺とまーちゃんは耳を疑う。
「どういうこった!?」
「……母から聞いた話では、半年ほど前、どこかから貴重な鉱石が採掘できる鉱山があるという情報を得た父は、村のためにと、単身そこに出向いたそうです。しかし、父が持ち帰ってきたのは、鉱石などではなく、ヒドラ病でした。自分が発症したことで、父はようやく気付きましたが、その頃には既に遅く、村中にヒドラ病が蔓延していました。その惨状に、流石の父も責任に耐えかねたのでしょう。発症から2日経ったある日、忽然と姿を消していたそうです」
ヒドラ病流行の経緯をラーサーの口から語られ、俺は絶句した。
「これでわかったでしょう? 思いつきだけで生きている無計画な楽天家は、いざという時、責任をとらない。そんな人のどこを好きになれと? わかったら前衛は僕に任せて、あなた達は僕の足を引っ張らないようにしてください。あなたや父のような人種は、どうせ危なくなったらすぐ逃げ出すに決まってるんですから、それぐらいしてもらわなければ困ります」
それだけ言い終えると、ラーサーはまた歩み始めた。
その背中は、1人で村の命運を背負ってるみたいだったが、それだけに危うさも感じる。
「勇者様……」
「わかってる。どんだけ嫌われようが、迷惑に思われようが関係ねぇ。今のあいつの方がよっぽど危なっかしすぎる。このままほっとくわけにはいかねぇよ」
「ですね」
そう言って俺達は、ラーサーの後を追った。最深部まであと少しだ。
採集とバトルにおける収穫
銅貨170枚
岩塩2個
硝石3個
薬草2束
水2瓶




