最初の魔法は
村を出て北上すること数十分。俺達は目的の洞窟に到着した。
中は薄暗く、漆黒の闇に包まれた奥からは、水の滴る音と魔物の鳴き声だけが聞こえてくる。
(ダンジョンの定番とはいえ、元の世界にいた時なら、絶対入らねぇな。こんなとこ)
「どうしたんですか? さっさと入ってください。まさかとは思いますが、ビビってるんですか?」
「誰がビビるか! いいか? 勇者って字はな『勇ましい者』って書くんだ。その称号を持つ俺が、こんな程度の洞窟にビビるわけ――」
ラーサーにそう言い返し、俺は洞窟に足を踏み入れた。その直後、中から蝙蝠の大群がブワーッと現れ、俺達に襲いかかってくる。
思わぬ奇襲に驚いた俺は、多少の手傷を負ったものの、まーちゃんとラーサーと協力して、辛くも撃退した。
(び、びっくりしたー! 急に襲ってくんなよな)
我武者羅に剣と木刀を振り回したことで、息を切らしながら、心の中で蝙蝠に文句をつけていると、頭の中に何かの呪文が流れ込んでくる。
その内容に、俺はある可能性を感じた。
(これって……)
「ん? どうしました?」
「いや……」
そう言って俺は、ふと、まーちゃんに目をやる。その腕には、さっきの蝙蝠にやられたと思われる傷が。
「まーちゃん、ちょっと腕出してくれ」
「え? いや、いいですよ。この程度、ただの掠り傷ですから」
「いいからいいから。微々たる程度とはいえ毒に冒されてるかもしんねぇし、こっちもちょっと試したいことがあるから」
「は、はぁ」
そう言うと、まーちゃんは腕を俺の方に向けた。その腕に俺は手を翳し、
「……回復の光よ。かの者の傷を癒やせ……【ヒール】!」
と、詠唱した。
すると、まーちゃんの傷口が見る見るうちに塞がっていった。
「これは!」
「あぁ、思った通りだ」
俺は念願の魔法。それも回復系魔法の【ヒール】を覚えていた。どうやらさっきの蝙蝠戦で、経験値が一定に達したらしく、それで会得したみたいだ。
てことは、今後も根気よく戦っていけば、一定のタイミングで新しい魔法や技を覚えるかもしれない。俺は歓喜した。
その喜びようを見ていたまーちゃんは、素直に祝福してくれたが、冷血野郎であるラーサーは、
「感動しているところ申し訳ありませんが、先を急ぎましょう。こうしてる間にも村は存亡の危機を迎えているんですから」
と、冷徹な言葉を浴びせてきた。
チッ、んなことはわかってるよ。けどな、こっちは初めて魔法を覚えたんだぞ? ちったぁ浮かれてもいいだろ?
そう思いつつも、俺達はまーちゃんが持参していた松明に火を灯し、洞窟の中へと入っていった――――
勇は【ヒール】を覚えた。
・【ヒール】についての説明
あらゆる傷や状態異常を癒す回復魔法。
この世界には、これ以外の即時回復魔法は存在しておらず、消費するMPの量によって、回復量が変動する(最大で全回復)
消費MP1~100 (回復量によって変動)




