予想外
調査してみると、ヒドラ病の恐ろしさが身に染みてわかった気がする。
窓から家の中を覗いてみたら、ほとんどの家で、みんな紫がかった痰を吐き散らかし、毛穴という毛穴から血を出している。
(こりゃ、一刻を争うな)
言いようのない危機感を募らせた俺は、洞窟の詳しい位置を聞き、必要な物を買い揃えてきたまーちゃんと合流し、いざ、その洞窟へと向かおうとした。
すると、
「いいから、うちで大人しくしててくんろ!」
という田舎訛り全開の怒鳴り声が、村の入口の方から聞こえてきた。どうやら誰かがメールさんと言い争いをしてるらしい。
(てか、あれ? 今の声って……)
その声に聞き覚えがあった俺は、まさかと思い行ってみると、案の定、
「あ、やっぱりそうだ! ラーサーじゃねぇか!」
「ん? 勇さん。まだこの村にいたんですか。てっきりもう旅立ったものかと」
そこには、バシレイアにいるはずのラーサーがいた。
「相変わらずの減らず口だな。てめえって奴は。こっちも色々と準備が必要だったんだよ。それよりラーサー、さっきの方言」
そう言われて、ラーサーは顔を真っ赤にした。あー、やっぱ聞かれたくなかったのね。
「よりにもよって、この人に聞かれるとは……不覚です」
「そういうもんじゃないよラーサー。勇者様に向かって」
「おっ母は黙ってけろ!」
「おっ母って……え!? お前もしかして、メールさんの息子!?」
「もしかしなくてもそうです」
へー。つーことは、ここはラーサーの地元でもあるわけか。なるほどなるほど……ん? てこたぁこいつ、地元のピンチより仕事を優先したのか?
「お前、俺が『来るか?』って誘った時、断ったよな?」
「えぇ。ですから、さっさと仕事を片付けて、こうして馬で駆けつけたんです」
あっそ。本当に気にかけてんなら、仕事ほっぽってでも来ると思うけどね。普通。
「それで、ラーサーさんはどうしてここに?」
「国王からの返答を、村長である母に伝えに来たんだ」
「あの王様から? 内容は?」
俺がそう聞くと、メールさんは俯いて、
「救援要請を拒むという、内容です」
と、蚊の鳴くような声で答えた。
ラーサー親子が言うには、メールさんはヒドラ病が流行し始めた頃から、バシレイア城内に備蓄してある聖龍草を送ってくれるよう、再三に渡って要請していたらしい。
が、あろうことかバシレイアはそれを拒否した。『税収の少ない村に渡す聖龍草は無い』たったそれだけの理由で。
もし、それが本当なら、バシレイアはこの村を見捨てたってことになる。




