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まーちゃんとクエスト!!  作者: 天馬光
第一章 バシレイア
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夢という名の壁

 と思ってたら、初七日を過ぎた頃には、いつもの親父に戻ってた。

 ほんとのところは、多分そんなことなくて、まだ金も手もかかる俺を男手一人で育てていこうと決心して、無理に立ち直ったんだと思う。


 それからの親父は、慣れない家事に悪戦苦闘しながらも、在宅勤務にしたり、わざわざ試合を応援しに来たりと、なるべく俺といる時間を増やしてくれた。

 高校生にもなって親父が試合会場に来るのは、過保護すぎて恥ずかしかったけど、それでも、一緒にいてくれるだけで寂しさが紛れた気がして、少し嬉しかった。

 中でも嬉しかったのは、親父とゲームする時間が増えたこと。負けて悔しがる姿や、大人げないことをして子供のようにはしゃぐ姿を見てると、こっちまで楽しくなるし、RPGなんかは持てる知識フルに使ってサポートしてくれるから、すげぇ頼りになる。


 そんな親父が、レトロゲームをしてる時、いつもため息混じりに言ってる口癖がある。


「やっぱ、この時代のゲームには敵わねぇなぁ」

 って、決まって悔しさと嬉しさが混ざった複雑そうな顔をしながら、な。


 親父が言うには、今の時代、リアリティやらグラフィックやらを重視する傾向にあるが、中身がスッカスカでちっとも面白くないらしい。その点レトロゲームは、画質こそ劣るが、オリジナリティがあり、例えようのない没入感とシンプルさ故の奥深さがある。

 そこに近付こうと、親父は何度も足掻いたが、親父自身が納得のいくものは1つもできていない。

 それもそのはず、ゲームはあくまで商品であって、芸術作品じゃない。売れるゲームを作るためには、今時のリアル志向のユーザーに合わせて妥協しなければならないところも多々ある。独り善がりな自己満足なゲームを作ろうとしたところで、企画段階でボツになってしまうのが関の山だ。

 それに、レトロゲームには限られたデータ量の中で、なんとかいい物を作ろうとするクリエーターの執念みたいなものがあるらしい。そう考えると、家庭用ゲームでギガやテラなんて当たり前の今のご時世じゃ、表現力が増した反面、執念という点では昔に比べて希薄になってるのかもしれない。


 これらのことから、親父にとってレトロゲームは、憧憬の対象であると同時に、果てしなく高い壁だった。

 その壁を越えるために、親父は『レトロゲームのように、未来永劫愛されるゲームを作る』というスローガンを掲げ、お袋を失った俺を育てながら、数多くの大ヒットゲームを生み出し続けた。


 でも結局、親父は壁を越えることができなかった。生まれつき心臓に持病を持っていた親父は、日頃の無理がたたったせいか、心臓発作を起こし、そのまま帰らぬ人となってしまった。

 俺がそれを知ったのは、高校生活最後の全国大会の決勝戦に臨む直前のこと。顧問である那須Tから親父が倒れたと聞かされた俺は、試合を放棄して親父の元へ向かった。

 けど、その時にはもう……


(親父。無念だっただろうなぁ。こんな形で死んじまうなんてよ……)

 悲しみに暮れた俺は、棺の中で安らかに眠る親父を前にして、一頻り泣いた後、涙を拭き、ある決意をした。


(親父、安心しろ。あんたの遺志は俺が継ぐ。あんたが作りたかった理想のゲームを、俺が代わりに作ってやる!)

 ってな。

 親父の背中を見て育ったことで、いつかなりたいとガキの頃からずっと憧れてた職業だから、それを選択することに迷いはなかった。

 ただ、スポーツチャンバラでいいとこまでいったから、どっちを極めようかって少し決めかねてただけで。


 その後は、自分でも驚くぐらい行動が早かった。実業団の誘いや先生からのスポーツ推薦を断って、ゲーム開発の専門学校に進学した俺は、ゲームについて必死に勉強し、そこそこの成績で卒業した。まぁ、内定こそもらえなかったけどな。


(けど、それがなんだってんだ。そんなことで焦ったってしょうがねぇだろ。何年かかっても親父の遺志を、俺の夢を叶える。それでいいじゃねぇか)

 卒業式の後、自分にそう言い聞かせて奮い立たせた俺は、その後も面接でプレゼンするためのゲームを開発しながら、就活に勤しんだ――――

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