やっぱり最初はお前か
当てもなく彷徨うことおよそ1時間(あくまで俺の体感だけど)。ここまで運良く魔物と遭遇しなかった俺は、道すがら綺麗な川を発見し、そこの水で久々に喉を潤した。
(生き返る~)
そんな風に思いホッとしていると、ふと、あることに気付いた。もしかしたら、この川に沿って行けば、町に着くかもしれない、と。
特にこれといった根拠は無いが、このままフラフラ歩いているよりかは遥かに建設的だ。
となれば、行動あるのみ。俺は口を拭い、上流を目指して進もうとした。
その時、背後の茂みからガサガサと何かが近付いてくる音がした。人や獣の足音にしては、明らかに音が小さいし、独特の音が混ざってる。俺は嫌な予感がしつつも、音がする方を振り向いた。
案の定、そこにいたのは半透明の液体生物みたいな奴。RPG定番のザコモンスター・スライムだった。
長年愛され続けているモンスターとの遭遇に、ご本人登場みたいな感じがして、多少感動すら覚える。
(っと、いかんいかん。油断大敵だよな。こいつがザコなのは、あくまでゲームの中の話。溶解液とか吐かれたりしたら、骨まで溶かされねぇよな)
とはいえ、こいつぐらいから肩慣らししとかないと、もっと強い魔物と出くわした時に対処できなくなる。俺は警戒しつつ、スライムとの初戦闘に挑んだ。
注意深く観察しようと身構える俺に応えるように、スライムは先制攻撃をしかけてくる。
といっても、体当たりは遅いから余裕で避けれるし、当たったところでダメージも0。警戒していた溶解液も、着ていたリクルートスーツの一部が溶けて、肌が少しピリッとする程度で大して痛くない。
つまり、何が言いたいかっつーと……
「結局ただのザコじゃねぇか!」
俺は警戒しすぎていた自分への怒りをこめて、スライムをぶん殴った。
特有のぬめりに気持ち悪さを感じたのも束の間、スライムはシャボン玉が割れるように弾け飛び、消滅した。どうやら倒したらしい。パンチ1発で撃破って、どんだけ弱いんだよ。
後に残ったのは、鈍い輝きを放つ1枚の銅貨。どうやらこれが、この世界共通の硬貨らしい。どれぐらいの価値があるかはわかんねぇけど、あるに越したことはない。俺はズボンのポケットにそれを入れた。
「あばよスライム。お前の死は、決して無駄にはしない。お前からもらった微妙な経験値と小銭は、ありがたく有効活用させてもらうよ」
倒したスライムに合掌し、別れと皮肉を述べた俺は何事もなかったかのように、先を急いだ――
広岡勇(Lv1)のステータス
HP……20
MP……0
物理攻撃力……10
物理防御力……6
魔法攻撃力……0
魔法防御力……1
素早さ……5
命中……5
運……3
数値に関しては、なんとなくこれぐらいかなと思っていただければ幸いです。
・初期装備
リクルートスーツ
革靴
鞄
・特技……【カウンター】 【がむしゃら斬り】
蛇足は承知の上ですが、今後も新規参入した時など、要所要所で掲載します。