まずは準備
翌朝。俺は朝食を食べた後、宿屋の主人に金貨2枚を支払い、チェックアウトした。
再びバシレイアの町に駆り出して、まず最初にやったのは、この世界の常識を学ぶこと。これをしないことには、順応など夢のまた夢だからだ。
そのために俺は、午前中フルに使って、住民や町を観察した。その結果、わかったことが3つある。
1つ目は、言語について。都合のいいことに話す分には日本語と同じだった。まぁ、これに関しては、同級生の異種族もそうだったから驚くほどのことでもない。
問題は読み書きの方だ。町の看板やポスターには、どう表現したらいいかわからない文字がそこら中に溢れている。これを理解し、書けるようになるには、なかなかの時間がかかるだろう。
2つ目は、時間について。これも日本とほぼ同じで、1日が24時間。6日で1週間。1年は364日だった。
宿屋のカレンダーを見た感じでは、月の名前は数字とは違う呼び名が用いられており、4ヶ月に1回の割合で、月末が30ではなく、31の日がある。主人いわく、この4ヶ月は季節の変わり目らしく、月初めまたは月末はそれを祝う祝日となっているそうだ。
ちなみに今はその4ヶ月の内の1つであり、新年の始まりでもあるラグナ暦7998年ノルムの1日。俺らの世界で言うところの元日だ。
てわけで、一応言っとく。明けましておめでとうございます。
最後は物価と金について。この世界の通貨は全部で4種類。高い順から白金貨、金貨、銀貨、銅貨とあり、それぞれを日本円に換算すると、10000円、1000円、100円、10円ぐらいだと思われる。
(そう考えると、旅の資金5000円って安すぎんだろ! 修学旅行の土産代か!)
なんてツッコミを入れても、今更仕方ないから、ここはスルーして話を戻すとしよう。
じゃあ、そんな貨幣価値なら、物価はどうなんだろうと住民の買い物を見てたら、興味深いことが判明した。
基本的に、日用品や食材の値段がバカみたいに安い。文房具やレターセットがだいたい銅貨2~4枚。野菜や肉といった食材に至っては薬草と同額の銅貨1枚で買えちまう。ランチも銀貨3枚で食えるところもあるみたいだし、正直、儲ける気あんの? って、見てて思った。
その反面、服や嗜好品、武器とかといった類は比較的割高となっている。ただ木を削っただけの木刀が銅貨5枚だし、酒や服の中には平気で白金貨が何枚も必要な物もある。どうやら、人の手がかかった物は、それだけで値が張るらしい。
(人件費が1番かかるのは、どこの世界も一緒ってわけか)
って、他人事のように思いたかったが、悠長に構えてはいられない。この問題は、今の俺とも深く関係している。
現在、俺が持ってる全財産は金貨3枚。これからある目的のために、ランチがてら酒場に行くから、その分を差し引くと、金貨2枚と銀貨5枚が手元に残ることになる。
これらを使って装備を整えたいところだが、ここで少しでもいい装備を買おうとすると、不足してしまう。かと言ってケチりすぎたら、ちょっと強い魔物とエンカウントしただけで、御陀仏になりかねない。
悩んだ末に俺は、今後のことを考えて、余裕が残る程度の金額で装備を揃えることにし、服屋と武器屋と薬屋に向かった――
ちなみに購入した物は以下の通り。
木刀(銅貨5枚)
革の兜(銀貨3枚)
革の鎧(銀貨4枚と銅貨5枚)
革の小手(銀貨2枚)
革のブーツ(銀貨1枚と銅貨8枚)
薬草 5束(全部で銅貨5枚)
解毒薬 1瓶(銀貨1枚と銅貨2枚)
スライム戦でボロボロになったリクルートスーツと革靴は、処分してもらうため、防具屋にタダで引き取ってもらった。
残金は、金貨1枚と銀貨6枚と銅貨5枚。(ランチ代含む)
月の名前は主に地水火風の精霊の名前を基にしていますが、年数については適当に考えたので、特に深い意味はありません。




