言葉は刃物
一時はどうなるかと思ったが、なんとかなったようだ。ホッと一安心していると、最大の功労者であるドラ坊が並走しながら話しかけてきた。
「なぁなぁアニキ。おいら役に立ったか?」
「あぁ。まさかあんな才能があったとはな。おかげで助かったよ」
素直にそう褒めると、ドラ坊は嬉しそうに何度もガッツポーズをした。
「じゃあ、これで改名してもらえるんだな?」
「バーカ。気が早ぇつーの。たった1回役に立ったぐらいで浮かれるとか、ガキかよ」
そう言うと、ドラ坊はあてが外れたのか、頬を膨らませて、
「うー、アニキのケチ。いいだろ? おいらの方がこいつより活躍したんだから」
と、まーちゃんを引き合いに出して抗議してきた。
「あ?」
「私?」
「だってそうだろ? ずっとアニキのアシストをしてるだけで、こいつ自体は弱っちい役立たずだ。なら、少しぐらいおいらのことを認めてほしいもんだぞ」
認めてもらいたい一心から無遠慮に投げつけられる言葉のナイフが、まーちゃんの心に容赦なく突き刺さる。
思わず立ち止まってしまうほど、落ち込む相棒。
それを見た俺は、無邪気なガキの襟首を掴んで止まり、無言で後頭部を1発叩いた。
「ブッ! 何すんだよ。アニキィ」
「お前なぁ、誰のおかげでその命があると思ってんだ? まーちゃんが薬を作ってくれたからだろ」
「そりゃ、そうだけど……」
「それにな、お前には俺1人だけが頑張ってるように見えてるかもしんねぇけど、うちのパーティはまーちゃんがいねぇと回復すらままならねぇし、まーちゃんがいてくれたおかげで救われた場面だって何度もあるんだ。そんな大切な仲間に対して『役立たず』とか、どの口がほざいてやがる。わかったら、2度と仲間を悪く言うな。それができねぇって言うんなら、お前はクビだ」
『クビ』このセリフだけは、できれば吐きたくなかった。なろう系によくいる仲間を平気でクビにするようなクソ勇者にはなりたくなかったから。でも、こいつ自身の成長とまーちゃんの心を思うと、心を鬼にして言わずにはいられなかった。
それが伝わったからなのか、己の過ちに気付いたドラ坊はシュンとしながら、まーちゃんの方を向き、頭を下げた。
「ごめんよ。まーちゃん」
「いいよ。ほら、誰だって言葉の綾はあるし」
まーちゃんはそう言って許したみてぇだけど、仲間にいきなりあんなこと言われたら、ムカつくし、傷付くよな。言葉は刃物、なんていうが、まさにその通りだ。
こりゃ、ドラ坊には向いてるジョブ以外にも、教えることが山ほどありそうだ。そう考えると、なんだか胃が痛くなってくる………………




