勇者のロマンスは遠くにありけり
と、嬉しくも虚しく思っていると、話が一段落つくタイミングを待っていたのか、まーちゃんが料理を運んできてくれた。
今日のメニューはまーちゃんがスパイスから調合してくれた特製カレー。これで米かパンでもありゃ完璧なんだが、沼野に入る前にマオのおにぎりを食い切っちまったから、1粒たりとも残っていない。
(こんなことなら残しときゃよかった)
なんてちょっと反省しつつも、早速いただく。
「どうですか? この子もいるので、甘めに作ってみたんですが」
んなの決まってる。美味い。ただ甘いだけじゃなく、ちゃんと辛さやコク、深みまである。限られた食材の中で、よくこれだけ旨いカレーを作れるもんだ。
そう考えると、まーちゃんの料理スキルはかなり高ぇ気がする。プロ級はちと言いすぎかもしんねぇが、家庭のレベルは遥かに超えている。少なくともこれまでの旅で俺の胃袋は、まーちゃんにガッチリと鷲掴みされている。
「あぁ、美味ぇよ。こんな美味ぇ飯を作れるんなら、まーちゃんはきっといい奥さんになれるよ」
俺からのお世辞抜きの賛辞に、まーちゃんは頬を赤らめる。あれ? 今、俺、その気にさせるようなことを不用意に言った? まぁでも、それでもいいか。ロリコン扱いされなきゃ、まーちゃんとそういう関係になっても満更じゃ……
って、いい感じの雰囲気になってたのに、
「熱っ! かっらーっ!」
というドラゴンのガキの一言で、折角のムードがぶち壊しになった。
ったく、こんな時に大声なんか出しやがって、空気を読めよ。クソガキ。つーかお前、この程度の甘口カレーで騒ぐとか、どんだけ猫舌で、辛いのが苦手なんだよ。ドラゴンのくせして、舌はお子ちゃまか。
だけど、おかげではっきりとわかったこともある。なんでRPGの主人公が、美女と同じパーティになってんのに、色恋沙汰に発展しないのか。それは、こうやって仲間に茶化されたり声をかけられたりして、邪魔されるからだ。そう考えると、旅の最中に恋愛を成就させた某RPGの5作目と別シリーズの10作目の主人公は、ある意味猛者と言える。まったく、尊敬に値するよ。
そう自分なりに考察した俺は、勇者にとってロマンスへの道が遠いという現実を紛らわせるように、カレーを平らげた。
(いいよ。ここへは婚活に来たわけじゃねぇんだし)
と、自分に強く言い聞かせて……
余談だが、俺の隣で食べていたドラゴンのガキは、この後『熱い』だの『辛い』だの文句を垂れときながら、10杯も食いやがった。なるほど。こいつも色気より食い気ってわけか。それにしたって、ここまで食うとはな。こいつには大食い属性まで付いてんのかよ………………




