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皇族、集結-09

 リンナは家宅の倒壊に際して気絶し、そこから目を覚ました時にクアンタやシドニア、サーニスと戦うイルメールの姿を視認した結果「アイツがアタシん家をぶっ壊しやがったんだな」と考えた。


 工房へと出向き、複数人で作業する場合に用いる大きな金槌を火所で熱した。処分予定だった物なので、これによって壊れてしまっても良いと考えていたし、何にせよここまで倒壊した自宅を前にして冷静な判断が出来ていなかったという側面もある。


そして、シドニアらと何やら言い争いをしている様子こそ分かっていたものの、しかしここでも冷静な思考をしていなかったから、思い切り振りかぶって、打ち付けたのだ。


その後、死なずに気絶しているだけのイルメールへ頬を往復ビンタこそして起こそうとするも起きないので地面へと乱雑に放置した所で――彼女がレアルタ皇国第一皇女のイルメールであると知る。



「…………」



 知った瞬間のリンナは、顔を真っ青にしつつも腑に落ちない、と言わんばかりの表情をしていた。


確かに下手をしていたら殺していたし、不敬な行為だったろうとは思うが、しかしこちらは住居を破壊までされているのに、それを皇族のやった事だからと納得する事も、謝罪をする気も起きなかったのだ。



「安心してくれリンナ。今回の件に関しては十対ゼロで、この気絶してる脳筋が悪い。謝る必要も無ければ、仮設住居の用意も私がしよう。そして家宅の立て直しに必要な費用も全てイルメール領政府に請求する」


「……それで一番腑に落ちないの吾輩なんじゃがの。実質イルメール領の財政はアメリア領が管理しているのも同義じゃし」


「そ……そう、ですか。良かった。……ていうかそれにしても、千数百度に熱された金槌で頭全力で叩かれて気絶しただけって、イルメール様どんだけ丈夫なんすか……? いや、やったのアタシですけど」


「まぁ、イルメール様ですしね」


「そういう問題なんすかサーニスさん!?」



 何にせよこのまま倒壊した家宅に居ても話は進まないだろうし、別の場所に移るかどうかをクアンタが提案しようとした、その時だ。



「あらぁ~。イル姉さま、やっちゃったねぇ」


「……いや、カルファス姉さまにも責任の数割はあると思うんですけどそれは」



 二人の女性が、いつの間にかリンナの住居跡に訪れ、その被害を眺めていた。



一人は綺麗な金髪を腰まで伸ばしたストレートヘア。シドニアとは色違いの、黒を基本とした王服を女性用にアレンジしたような衣服、何よりおっとりとした綺麗な顔立ちが印象強い美人であった。



もう一人は、下ろせば肩程までありそうな紺色の髪の毛を、後頭部でまとめたポニーテール。彼女も黒を基本色とした女性用にアレンジが加えられた王服を着込み、深くため息をついたのだ。



「カルファス、アルハット。お主ら何時頃からおったのじゃ?」



 突如として現れた存在に驚きを見せるアメリアだが、しかし二人は気にする様子もなく、気絶するイルメールに駆け寄る。



「アハハ、ねぇ見て見てアルちゃん! イル姉さま、頭焼け焦げてハゲてるし、ウケるーっ!」


「いえ、あの、だから何割かはカルファス姉さまのせいなんですってばマジで」



 呑気な二者を放って、クアンタがシドニアとサーニスに近づき、問う。



「まさか、この二人が?」


「ああ――レアルタ皇国第二皇女・カルファスと、レアルタ皇国第四皇女・アルハットだ」


「ん……あっ! 君がクアンタちゃん!?」



 金髪の女性がすぐに立ち上がってクアンタへと駆け寄り、クアンタの手を取る。


 そしてペロリと唇を舐めると、彼女の胸や全身を満遍なく触っていく。リンナが見る感じ、胸に触る比率が多いように思えたが、しかしクアンタは平然としていた。



「私がカルファスよ! アメちゃんから色々文が届いてて、気になったから飛んできちゃった!」


「飛んで?」


「あ飛んでっていうのは比喩表現なんだけど人体の霊子分解と再構築によっての転移術式なのよコレがあれば理論上は数百馬時は距離が離れていたとしても一瞬で移動が可能なの理論上だけでいうなら時間移動や平行移動も可能になると思うのだけれどそこはまだ証明が出来ていなくてでもでもクアンタちゃんの情報が確かなら色々とこの理論に改善が出来る要素も考える事が出来るし私としてもクアンタちゃんとしても悪いお話じゃないと思うのだからお友達から初めて必要ならもっともっと深い仲になりましょう私は何時でも体だって差し出す準備は出来ているわ処女だけど!」


「……申し訳ありませんが、カルファス様。もう少し分かりやすくお願いしたいのですが」


「あ、ゴメンね矢継ぎ早に言っちゃって」



 えへへ、と顔を赤めるカルファスは、今一度ここへの移動方法について説明を開始。



「まず、人体を霊子っていう量子よりもさらに最小の単位にまで分解するのだけれど、この霊子を指定座標にまで転移移動させるって技術を私が開発したのね。コレを使って皆をここまで運んだんだけど」


「……けど?」


「イル姉さまの指定座標だけ設定を失敗しちゃったのか、空に移動させちゃって、イル姉さま慌てて剣振り回して家に着陸しちゃったんだってホントに面白くないっ!? マジヤバーッ、ってカンジ!」


「いやそれだけ聞くと主のせいにしか聞こえんが。アルハットよ、お前カルファスの責任数割って、カルファスに対して甘くないかえ?」


「アメリア姉さま止めてあげてください、事実は時に人を傷つけるんです」


「カルファスめがその程度で傷つくと思うのかえ?」


「……思いませんけれど」

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