シロフの実
シロフの群生地にやってきた。お姉ちゃんには一緒に来てもらおうと思っていたけれど、
『シロフの実をどうするか見たい』
と言う家族の意見を聞いて皆でやって来た。
その時に『アイカはどうしてそんな事を知ってるの』と聞かれたけれど返事が出来なかった。とりあえず『何となくそんな気がした』と言ったけれど本当の事を言った方が良いのかな。
「だいぶ実が弾けているね」
カイル兄の言う通り、以前花畑だった所は半分ぐらい白くなっている。
シロフの実を一つ取って触ると少し硬めだけれどふわふわしており、中に種が一つ入っていた。
『やっぱりコットンボールに似ている』
愛佳の世界ではもう少し柔らかな気がしたがそれでも充分な柔らかさだ。
「アイカ、この白く爆ぜた物を集めるのよね」
「そう。まだ硬くて爆ぜていないのは使えないと思う」
「さあ、籠を一杯にするわよ」
お母さんの掛け声で散らばって収穫だ。
籠一杯になった頃にはお昼近かった。今日はお弁当を持ってきていないのでピクニックは無し。家に帰る。お父さんとお母さんの籠は大きいのでシロフがいっぱい入っている。
シロフの入った籠を背負ったけれど軽い。良かった。沢山取ってしまったから運べるか心配していたけれどこれなら大丈夫だ。
家に帰ってこれからやる事を相談する。畑や採取などの仕事もしないといけないからこれからは私の仕事になった。今日だけはルー兄が手伝ってくれる。
籠5つを台所に置いたら狭くなってしまった。私達は籠を1つだけ持って外に出て地面に籠を開けシロフを出す。
「今日は天気が良いけれど雨や風の日は出来ないね」
「家の中ではやれないよね」
「汚れるから駄目だよ。それに明日からは昼はアイカが一人でやるんだよ」
「そうだった」
「夜は手伝ってあげるからね。今日、出来るだけ沢山進めよう」
ルー兄と話をしなからシロフの実の中から指で種を取り出していく。
作業をやり始めてわかったけれど大雑把に覚えているだけで細かい事は忘れていた。こんな感じかなぁと手探りで進めていく。
5つの籠の全ての種を出し終えたのは少し陽が傾き始めた頃だった。
「この後はどうする?」
「洗いたいな。まだ陽があるから一籠分だけでもいいから」
私とルー兄は一籠ずつ背負って小川に行き、とりあえず一籠を水につけて二人でシロフを洗った
「わぁ、真っ白」
洗ったシロフは白くなり綺麗になったけれど籠の3分の2くらいになっていた。
小川から籠を持ち上げようとするけれど、
「お、重い」
「ルー兄、持ち上がらないよ」
二人がかりで何とか小川のほとりに籠を置いた。籠からはぼたぼたと水が溢れている。
「家までは無理だね」
ルー兄と顔を見合わせてため息を吐く。
「アイカ、そろそろお父さんが森から帰ってくるから呼んできて。僕はここでシロフを見てるから」
「わかった」
私が家に着いたらお父さんとカイル兄が薬草の下処理をしていた。森から取ってきた薬草は纏めて縛って干しておく。その準備だ。
「お父さん、シロフが重くて持てないの」
「シロフは軽いだろう」
カイル兄が不思議そうに聞いてくる。
「小川に行って洗ったら重くなって運べないの」
お父さんとカイル兄はまだ納得してなかったみたいだけれど小川まで着いてきてくれた。
「あ、ルー兄」
小川にいたルー兄を見つけた。ルー兄は籠に手を入れてシロフを押している。絞っているみたい。
「ルーカス、どうしたんだ」
お父さんが声を掛けるとルー兄は籠を見て
「シロフは水を吸ってるだけだから絞れるんだ。だから、押して絞って水を出していたんだよ」
籠を見ると水が随分と減っている。
「このまま家まで持って行って一晩置いておけば水切り出来そうだな」
お父さんが籠を持ち上げようとして……やめた。
「お父さん、籠を持っていかないの」
「運べなくは無いけど持っていく途中で籠が壊れると思う」
お父さんがカイル兄に言うとカイル兄も『あぁ』と頷いた。私とルー兄の籠で小川に来たから重い物は籠が壊れてしまう。
「今日はこのままここに置いておいて明日の朝に取りに来よう」
私達は水に入れてない籠を持って家に帰った。
朝起きるとお父さんがもう小川に置いておいた籠を持ってきていた。
「水が出たら随分と軽くなったな」
お父さんがシロフを手に取って見ている。
「これを干すんだな」
古いゴサを出して来てシロフを広げる。水が抜けたシロフは軽くてふわっとしていた。
「今日は天気が良いから、アイカはシロフを干して。時々上下ひっくり返すと早く乾くよ」
「うん」
お父さんに返事をして、お母さんがいないのに気づいた。
「お父さん、お母さんはどこ?」
「お母さんは残りのシロフを洗っているよ。洗った物は置いてきて昼に森から帰ったら持ってくるからね」
「へへへ」
嬉しい。皆が手伝ってくれる。お姉ちゃんが『アイカ、また変な顔』って言ってたけれど知らんぷりしちゃった。