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…マーク…


俺は今ガイト村からトイル村へ向かって馬車を走らせている。ガイト村はヤマニーラ辺境伯爵領の中でも端の端にある。開拓が始まってまだ10年しか経っていなく、はっきり言って貧乏な村だと思う。

ただ、ガイト村の隣にある森には珍しい植物が多くあり、その植物が薬になる為(乾燥させた物)薬師などに需要がある。

俺は年に二回春と秋にガイト村やその通り道にある村に行商に行きながら買い取りをしている。


行商をしていると商人仲間から道中は危なく無いかと心配されるが、俺は盗賊に会った事が無い。ヤマニーラ伯爵領は辺境なので騎士団があり、しかもとても強い。盗賊の噂を聞くと直ぐに退治してくれていると聞いている。

そして、おそらくだが、貧乏な村から村へ行く行商人など襲っても割に合わないと思っているのだと思う。


今回もいつも通りに穀物や生活用品を馬車に乗せてガイト村へ行った。ガイト村に着くと村人が歓迎してくれて、荷物を運ぶのを手伝ってくれる。皆に商品を見てもらっている間に村長と話をして買い取りの品を見ていく。

村長への手紙は二通あった。一通はヤマニーラ街に住む息子さん家族から。もう一通は薬師のトニカナリさんからだ。トニカナリさんには返信を貰ってくるように言われている。村長にその旨話して俺は買い取り品を見ていく。


「えっ」

思わず声が出てしまった。薬草や動物の革はいつも通りある。

アサシーで編んだ籠もいつも通りなんだけれど柄が入っていた。

「どうなってるんだ」

柄入りの籠をじろじろ見ていたらマヤおばさんがこちらに寄ってきた。長い付き合いだから殆どの村人の名前はわかる。

「マークさん、どうだいこの籠。良いだろう」

「そうですね。珍しいですよ」

「こんなのもあるんだよ」

そう言ってリボンや花の飾りが付いている籠を見せてくれる。

「これは、また、良いですね」

驚いた。籠を上から下まで隅々まで見てしまった。

「アサシーで作ってあるのですよね」

「そうだよ。ちょっと工夫してみたんだよ」

マヤさんは、ハハハと笑いながら色々な籠を渡してきた。


他の家の所にも柄入りの籠があった。全て買い取りだ。これは絶対に売れると思う。俺だって奥さんや娘のお土産にしたいと思ったぐらいだからな。


査定をして行く。籠はいつもより2割増しで買い取った。村の人達が喜んでくれていたのが嬉しかった。


夜は村長の家に泊まる。夕食の時間に村長に籠の事を聞いてみる。

「初めはトーマスの家で作ったんだよ。何でも家族で籠を作って色々試していたら出来たらしい。村の皆に教えてくれて皆それぞれ工夫をしたらあんなに種類が増えたんだ」

「そうですか。驚きました。アサシーだけであれだけの物が出来るとは」

「ハハハ、そうだなぁ。マークさんが割り増しで買ってくれたから嬉しいよ。この冬は取り置いたアサシーが無くなってしまったぐらい皆頑張って作っていたからなあ」

「これからも作ってくださいね。あの籠は売れると思います。秋にまた来ますのでお願いします」

「あぁ、アサシーは直ぐに育つから大丈夫だ。皆に言っておこう」

「ありがとうございます」


俺と村長は夕食を食べ始めた。奥さんも加わって話が弾む。

「マークさん、申し訳ないんだけれどこれを息子達と姉に渡してもらえるかしら」


奥さんは柄入りの籠に手紙を入れた物をテーブルに出した。村長夫妻は領主の館で働いていた時にガイト村の開拓と村長の役目を頼まれた。息子さんはヤマニーラ街に住み領主の館で働いている。

お姉さんは領主夫人の侍女として働いていた。

「贈り物ですか。わかりました」

「本当はあちらに行けると良いんですけれど難しいので」

奥さんは残念そうに言う。

「この籠はきっと喜びますよ」

俺が言うと『そうよね』と言ってお茶を出してくれた。


「そうそう、薬師のトニカナリさんの手紙はどうでしたか。返信が欲しいと言ってました」

「トニカナリさんはガイト村に移住したいそうです。許可をして欲しいという手紙でした」

村長が手紙を見せてくれた。

「移住ですか。思い切りましたね」

「そうですね。独り身なので気楽に移動出来ると書いてありました。森の薬草に興味があるそうです」

「許可を出されるのですか」

「えぇ、明日村の皆に話をしますが反対する者はいないでしょう。薬師がこんな村に来てくれるなんて喜ばしいですからね」


その後も村長夫妻と話をして、就寝した。




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