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白いアサシー


白い柄入り籠は文字通り白いアサシーで作る。

柄入り籠自体はいつも通りに作れば良いので問題はないのだけれどアサシーを白くするのはとても手間がかかる。

マークさんが注文販売にした理由もここにある。



アサシーはいつものものを使う。太いものの方が一度に沢山取れるけれどあまり太いと硬くて叩いても柔らかくならず使えない。


叩くと表皮が少しだけ剥がれる。するすると剥がれるのではなく叩いた所が少しだけ落ちるぐらい。籠を作る時は叩きすぎると強度が無くなるのである程度叩いた後は手作業で表皮を取り除く。ナイフで少しずつ削る。先の長い仕事だ。


今回は強度は関係ないのでとにかく叩き中の白いアサシーを取り出そうと思う。

アイカはアサシーを水に溶かして固めるという工程を考えている。


話が終わると

「叩くのは我々の仕事だな」

と大旦那様とニールさんが立ち上がった。





「お、大旦那様、もう少し手加減をしてください」

カーラさんの言葉に大旦那様は『なぜ?』というかおをしている。

「貴方、表皮を取るために叩いているのにそんなに粉々にしては使えませんわ」

大奥様に言われて大旦那様は自分が叩いたアサシーを見て苦笑いだ。


伯爵位をシュミット様に譲ったとはいえ辺境伯騎士団に稽古をつけている大旦那様はシュミット様と同等の実力だ。力がとても強い。



「すまんすまん」


大旦那様は豪快に笑っている。

「大旦那様、こちらを」

ミナさんが淡々と大旦那様の前にアサシーの束を出した。


その後も時々大旦那様の破壊があったけれど充分な量の叩いたアサシーが出来た。


叩いたアサシーをミナさん、カーラさん、私が表皮を取り除いていく。


大奥様は初めはお茶を飲みながら私達の作業を見ていたけれど途中から

「私もやらせて欲しいわ」

と仰った。

大奥様はやる気満々だったけれど私達は慌てた。怪我でもしたら大変だ。


「オリビアにもやらせてもらえないだろうか」

大旦那様が言うけれど、

「しかし、怪我でもされたら大変です」

ミナさんが困り顔で答える。

「オリビアが自分からやりたいと言い出したのだから良い傾向ではないか」

大旦那様の言葉に悩むミナさん。


「アイカ、何かないかしら」


「そうですね」

先程見つけたザルのような籠を机の上に置いた。


「籠を作る時にはアサシーの長さがあるので一つに括って洗うのですが、今回は長さは関係ないので短いものもあり括れません。この籠に入れて水洗いをしようと思います」

皆んなが頷く。

「大奥様は表皮の取れたアサシーをこの籠に入れて頂くというのはどうでしょうか」

「それがいいですね。今手袋を準備します」

ミナさんが手袋取りに行った。

大旦那様がアサシーをいれる籠ももってくるように言っていた。




「アイカ、この後はどうするんだ」

「洗って白くなったアサシーを細かく切って柔らかくなるまで煮てそこにのりを入れたらどうでしょうか」


大旦那様に聞かれて考えていた事を話す。


「のり?」

「のりって」

疑問の声が聞こえる。あれ?のりってないの?


「アイカ、のりとは何だ?」

大旦那様に聞かれて大奥様を見るけれど

「私も知らないわ」

大奥様も知らなかった。


「手紙を出す時に封をするものですけれど…」

ないの?声が小さくなってしまう。


「封蝋の事か」

封蝋?ろう?ろうそくなの。


「えぇと。ろうではダメだと思います」

どうしよう。のりが無いなんて。


「触るとべたべたするものや物がくっつく物は無いですか」


「べたべたねぇ」

「くっつくというと…」

皆さん、考えこんでしまった。




「大旦那様、スーリの根はどうでしょう」

ニールさんが思いついて大旦那様に聞く。

「スーリの根か。使えそうだな」



「貴方、スーリの根とはどのような物なのですか」


「うむ。スーリの根は狩人や騎士団で使われる粘着力のある物だ。スーリの根だけではそれほど強力では無いから騎士団では粉を混ぜて煮詰めて使うな」


「それは使ってみる価値がありそうですね」

戻ってきたミナさん。


「大旦那様、スーリはすぐに見つかりますか」

カーラさんが聞くと大旦那様はニールさんを見て


「森の中に群生地がある。我々の仕事はきりがついたから明日ニールと行って取ってこよう」


「わかりました」

ニールさんも頷いた。


夕方になったので大旦那様と大奥様とミナさんは屋敷に戻る。残ったニールさんカーラさん私はもう少しアサシーの表皮を取ってから終わることにした。



ミナさんが手袋を持ってきたけれど結局大奥様は何もする事なく帰られた。

「手伝いが出来なかったわ」

と残念そうに言っていた。


「明日からやれば良い」

と大旦那様が言うと大奥様はとても嬉しそうに微笑まれた。

『可愛い』と思ってしまった事は内緒。




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