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期待



私、アイカは三度目の人生を歩んでいる。

一度目は貧乏で愛情も薄い人生だった。

二度目はお金に不自由は無かったけれど親から愛情は貰えなかった。

三度目。小さな時は貧乏だった。しかし、愛情はたっぷりかけてもらえた。だんだんと貧乏を脱却し、今では標準にまでなったといえる。


そして、昨日、家族からの愛情だけでなく好きな人と想い合う事が出来た。とても幸せだ。二度の人生で叶えられなかった愛する人と家庭を持ち、子供を育てる普通の生活をこれからの人生に期待してしまう。


令嬢アイカの時に弟のように思っていたトニカート様。アイカ姉様と呼ばれて手を繋いで庭を散歩した。修道院へ入った後も私に手紙をくれた。


14歳になって、愛佳や令嬢アイカの記憶も薄れてきているけれどヤマニーラの人達にトニカート様に温かい気持ちを持ち、愛情を貰ったのは忘れていない。


ガイト村のアイカとして過ごしてトニカート様の優しさや尊敬出来る心持ち、時に厳しい態度など惹かれてしまうのは仕方がなかった。


貴族であり12歳も年上の大人の男の人。決断力や判断力もある。シロフ事業もどんどん大きくして、薬師としても優秀。

そんなトニカート様が私に好意を持ってくれていたなんて。

本当に嬉しい。


王宮であった事も教えてくださった。

「アイカは何も心配しなくていいから」

トニカート様は何度も仰った。ガイト村のアイカならば相手がシルキート公爵家なので気に病むところだけれど令嬢アイカは父や義妹がやる事は余り意味が無いとわかる。

「はい。私は大丈夫です」

本心で答えた。それでもトニカート様は心配されていたけれど最後には大丈夫だと安心して頂けたと思う。


先程、トニカート様を見送った時、照れた様に声をかけてくださって…私も顔が赤くなってしまった。


一週間後、元気にお帰りください。





ノイドさんやライラさんからも生温かい目で見られているよね。

「旦那様は遅すぎます」

「ヘタレと言うのですよ」

二人の会話が聞こえてしまった。

「アイカ、良かったわね」

ライラさんに声をかけられて私は小さく頷いた。私の気持ちはわかっていたんだろうな。

認めてもらえて嬉しい。



トニカート様が戻られるまでの一週間は普段通りの生活だった。少し違うのは家で私の結婚の事が話題の中心だった事。


明日で一週間になる。


「アイカ、そわそわしていますよ。落ち着いてね」

ライラさんに注意されてしまった。



家族との話で出た結婚式の服の事ベールの事などトニカート様には話したい事が沢山ある。ありすぎて何から話そうかなんて考えていたのがいけなかった。


仕事はしっかりとやらないと。





「手紙が届きました」

応接室を掃除しているとノイドさんが部屋に入ってきた。

「旦那様からです。私とライラ宛のものもあります。今読んでも構いませんよ」

仕事中だから後で読もうとしたらノイドさんが許可を出してくれた。


『ヤマニーラ領西部の村で高熱病の患者がいる。蔓延しない様対処してくる。帰りが遅くなる。トニカート』


急いで書いたのだろう。短い文で字も乱れている。

ノイドさんやライラさんへの手紙も同じで二人の手紙の最後には『アイカを頼む』とありこんな時なのに嬉しくなる。


「伯爵様から頼まれたのでしょう。旦那様は薬師として今までも高熱病を治療しています。皆で待ちましょう」





カイル兄が屋敷にやって来て、ノイドさんに村長さんとマーク商会のガイト村店主ヨナスさん、お父さんを呼ぶ様に頼む。

カイル兄は集まった人達にトニカート様が高熱病の治療に向かった事、伯爵家から高熱病の予防を徹底する事、カイル兄には薬を作る薬草の確保と薬の調達を頼まれたと話した。


カイル兄は村長さんとお父さんに村民に予防策を周知させ、薬草の収集を頼んだ。

ヨナスさんには薬を作るために必要な器具や入れ物、足りない薬草を頼む。

「トニカート様から場所が無いだろうから屋敷で薬の調合をする様に書いてありました」

ノイドさんとライラさんが頷いた。



…高熱病…

高熱・悪寒・脱水・呼吸困難感染力が強い

初期治療により完治

風邪と症状が似ている為治療遅れで重病に。

重病の場合の致死率50%以上

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