籠
村会議は月の初めの日に行われる。全ての村の家から一人出席して問題や希望を話し合う。纏まらない時は持ち越しになるが今迄持ち越しになった事は無い。
お父さんは今日柄入りの籠を3つ持って行った。お母さんとお姉ちゃんに作り方を教えたら
「こんな方法があったのね」
と、驚いていた。
一つ飛びの所を二つ飛びにして一段ずつずらしたり、葦の様な物(アサシーという名前だった)の茎を一本の所を二本にして太さを変えたりちょっとした事で柄入りになる。
お母さんもお姉ちゃんも自分で工夫をして籠を作っていた。
はっきり言って私の籠よりも綺麗に出来ていた。
私の籠は売り物にならないみたいで家に置いてある。
「アイカは小さいからまだ上手に編めないのよ。力が足りないからしょうがないわ。小さい籠を作ると良いわよ」
お姉ちゃんが慰めてくれる。
「それに、アイカがこんな工夫を思いつかなかったら出来なかったんだからアイカが一番凄いのよ」
「うん」
私は嬉しかった。二度の人生で自分を認めてもらった事は無かったから。
それに、これでちょっとは貧乏では無くなるかもしれないと思ったらにやにやしてしまう。
「アイカ、変な顔」
お姉ちゃんと笑い合って籠を作る。
お父さんが村会議から帰ってきた。
「お帰りなさい。どうでしたか」
「「「「お帰りなさい」」」」
家族皆でお父さんを迎える。お父さんは寒そうに家に入ってきた。冬はもう少し続く。
「皆驚いていた。どうやって思い付いたのかとか誰が考えたんだとか随分と聞かれたな」
お父さんが私の頭を撫でる。
「話し合った通り、家族でこんな籠はどうかなぁ、なんて作っていたら偶然出来ていた、と言っておいた」
お母さんが頷いている。村会議に行く前に柄入り籠をまだ4歳の私が作ったと言うと何か言われるかもしれない。と考えて皆で籠を違う編み方が出来ないかとあれこれしていたら出来たという事にしようと決めていた。
次の日、お母さんは先生になって村の女の人達に籠の編み方を教えている。お姉ちゃんや私も手伝って説明していく。おばさん達は皆驚いていた。
「よく思いついたね」
隣の家のマヤおばさんがお姉ちゃんと私の頭を撫でてくれる。
「商人のマークさんが驚くね」
「そうだね」
「高く買い取って欲しいね」
「珍しい柄をどんどん作ろうかね」
「「「そうね」」」
おばさん達が楽しそうに話をしながら籠を編んでいる。私も友達のサリアと一緒に編む。
サリアは村で同じ年四人の一人。後の二人は男の子だ。
「アイカちゃん凄いね」
「へへへ」
褒められて嬉しい。
私達はお姉ちゃんに言われた通り小さい籠を作っている。
途中、小さい輪を真ん中で押さえてそこをアサシーで軽く括るとリボンになるのを見つけ、それを籠に飾りでつけてみた。
「可愛い」
サリアの言葉が聞こえたのかお母さんがこちらに来たから飾りを見せた。
「お母さん、見て、可愛く出来た」
お母さんは籠を、飾りを見ている。凄く見ている。
お母さんを見たおばさん達もこちらに来てお母さんの持っていた籠を見た。
「これは良いよ」
マヤおばさんが言うと、お母さんもうんうん頷いていた。
「アイカ、どうやって作ったの」
お母さんが微笑んでいるんだけれどちょっと怖い。凄く真剣だ。目が笑っていない。
私は作りながらお母さんとその周りにいるおばさん達に説明した。
「なるほど」
「ほう」
「簡単だけど可愛いんだね」
おばさん達の中から色々な会話が聞こえる。
その後、輪を3や4つにすると花の形になる事も分かり、こちらもおばさん達に気に入ってもらえたみたいだった。
冬の間、保管していたアサシーが無くなるのと春が来るのとは同じ頃だった。