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決断

…トニカート…


ガイト村に戻った私は何とかアイカに気持ちを伝えようとするのだけれど後一歩が出ない。


執事のノイドも侍女長のライラも兄上から手紙で事情を聞いたらしく以前にも増して協力的だ。


ノイドは執務室でアイカと二人の時間を、ライラは私の世話をアイカにさせる。


極め付けにアイカの家族だ。遅くなったら屋敷に泊まらせて欲しいと言ってきた。

泊まる時、部屋も別だしノイドとライラに厳重に監視されている。しかし、晩餐の後の二人での寛ぎの時間や同じ屋敷にアイカがいるのが嬉しい。


ここまでしてもらっているのに私はまだアイカに気持ちを伝えられていない。


自分でも自分が情け無い。


グルグルと考え、過ごしていたらあっという間に一カ月経っていた。

今ではノイドやライラだけで無く、屋敷中から残念な目で見られているようだ。


解ってはいるんだ。いつも後一歩の所で言葉が出ない。




兄上から領都への呼び出しがきた。レース漏出の件が粗方片が付いたので話がしたいと。


ノイドが兄上に報告しているのは知っている。全てご存知なのだろう。



領都には道中も入れて一週間程の予定をとった。そのため仕事が忙しくなりアイカの事も何も出来ずに日にちが経つ。

(忙しく無くても何も出来なかったがどうしようかと考えてはいたんだ。だからこれは言い訳では無い)


領都に立つ前日、今日はアイカが屋敷に泊まると報告を受けた。明日朝早く自分が屋敷を出る時に準備の手伝いと見送りをしてくれるらしい。


「トニカート様、お顔が気持ち悪いです。ニヤニヤしてます」

私の執事はキツくて鋭い。

「晩餐までには仕事を終わらせる」


結局、晩餐までには終わらなかった。晩ご飯を食べる気にもならず、寝るにはまだ早い時間だ。

談話室で少し休憩してから寝るとするか。


「談話室に紅茶と軽食を頼む」

ライラに頼んで談話室に向かった。


部屋に入ると直ぐにトントントンと扉を叩く音がする。

「入ってくれ」

「失礼致します」

部屋に入ってきたのはアイカだ。


テーブルに紅茶や軽食、果物が並ぶ。部屋にはテーブルに置く音だけだ。


「ライラさんから頼まれました」


「ありがとう。アイカも座って。少し話をしようか」

アイカが少し俯き加減で向かいのソファに座った。


「明日から領都に行って来るよ」

「はい」

「一週間程で帰って来る予定だ」

「道中お気をつけてお帰りください」

アイカが私の顔を見て微笑んでくれる。


あぁ、いつもこうして自分を家で待っていて欲しい。


「アイカ、結婚しようか」

「えっ」


ちがぁぁぁぁう。

「あ、ま、す、すまない。間違えた、では無くて、

あぁぁ」

アイカは固まっている。


落ち着け。落ち着くんだ。


「私はアイカが好きだ。結婚したいと思っている。アイカとたわいも無い話も沢山したいし、私が出掛けてもアイカが家で待っていてくれると嬉しい」


支離滅裂になってきた。


「とにかく、私はアイカが好きだ」


言った。言ったぞ。

はっ、自分に満足してしまった。アイカの返事は?


アイカは真っ赤な顔をして俯いている。


「アイカ、アイカは私の事をどう思っている?」


「トニカート様は貴族様です。私の気持ちなど恐れ多く…」

アイカの目から涙がポロポロ落ちる。

「アイカ、実はもう父上母上や兄上など伯爵家の家族には話をしてあるんだ。私は貴族籍を抜けここでシロフ事業と薬師として暮らしていく。賛成してもらっている」


「そ、そんな。貴族籍を抜けるなど…」


「私は次男だから元々私の子供には貴族籍は無いんだ。だから今抜けても問題は無いんだよ」


アイカの手を取り目を合わせる。

「私と結婚して欲しい」





「…はい」

思わずアイカを抱きしめた。アイカも大人しく私の腕の中にいる。



トントントン 扉を叩く音がする。

「トニカート様、失礼致します」

ノイドが返事をする前に入って来た。


私がアイカと離れてノイドを見ると何故か大きく頷いた。

「どうした?」

「その様子では私の心配も必要ないかと」

絶対にわかっていて話しているな。

「心配かけたが、私はアイカと婚約する。アイカにも良い返事を貰ったからな」


アイカが私の後ろに隠れてしまった。可愛い。


「おめでとうございます。トーマスに知らせても?」


「頼む」


その後トーマス家族が屋敷に来て、話し合い、来年の春のガイト村結婚式で婚姻する事にした。


村人と一緒の結婚式ではダメだとトーマスが譲らなかったが私は平民になるのだし村民に祝って欲しいと説明して了承してもらった。


次の日の早朝アイカに見送られて屋敷をたった。





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