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王太子夫妻(下)



知らなかった。

「どの様にして…」

言葉が出ない。

「修道院で病気になったそうよ。修道院には公爵家からは何も無かったそうなの。修道院への寄贈もアイカさんへの面会も手紙すらもね」


「はい」

「後はこれはわたしが影に調べさせたのだけれど」

「まさか、殺されたのですか」

「違うわ。私もそれを疑って調べさせたのだけれど…。アイカさんへの面会希望はヤマニーラ伯爵家から何度もあったのだけれど、シルキート公爵が修道院院長を買収して断らせていたらしいわ。手紙は何とか渡ったようだけれど。それでも毎回ではなかったようよ」


「酷いことを」


「貴方がそれを言うのはどうかしら」

母上の嫌味が炸裂する。


「話が逸れてしまったわね。エリックの婚約者なんだけれど、ルイーザ・シルキート公爵令嬢をエリックは嫌がっているのよ。エリックもアイカさんを姉様と呼んで慕っていたから。それに陛下もシルキートとサーランが組んだのを知って猛反対よ。隠してる様だけれど王家に隠し事は無理なのにね」

母上の笑顔が黒い。


「サーラン家は私の外戚になったのにエリックにも手を出すのですか」


「貴方達には子が居ないから焦っているのでしょう。今のままですと貴方が王になっても次はエリックですから」




「どうしましたか」

黙ってしまった私に母上が声を掛ける。

「母上、私はロザリーとサーラン家に踊らされたのでしょうか」

知りたくないが思い付いたらはっきりさせたくなった。


「やっと気が付きましたね」

母が優しく微笑む。


私は、私は、何をやっていたんだ。




「何故、ロザリーとの婚姻を赦したのですか」

グルグルと色々な思いが頭の中を巡る。やっと言えた言葉だった。


「貴方が望んだからです。どんな思惑があろうとも、国王、王妃の前に私達は貴方の親です。子供があれほど望むのならば叶えてあげたいと思ったのですよ。それにサーラン家がどう動こうと王家は揺るがない確信もありましたからね」


母が私の頬を拭う。知らずに涙が出ていたようだ。


「母上。私は…」


母が頷く。


「私は、生涯国の為に尽くします。ロザリーも私が責任を持って対応します」


「バラモン、貴方は私の大事な息子よ」


「はい、母上」




母と二人、お茶を飲む。さめてしまったがとても美味しい。

お互い何となく気恥ずかしい。

「こほん…母上、エリックの件ですが、母上達は誰か良い令嬢の心当たりがありますか」


「ええ、ヤマニーラ辺境伯爵家のセリーナ嬢を考えていてね、ヤマニーラ伯爵に伺いをたてたのだけれど断られてしまったの」


「王家からの話を断ったのですか」

驚いた。貴族家が王家の話を断るなど聞いた事が無い。


「貴方も知っての通りヤマニーラ伯爵はシルキート公爵の弟でしょう。いつもは領地に居るのだけれど王都に出て来た時にアイカさんと交流があったの」


「先程修道院へも連絡を取っていたと言っていましたね」


「だから、ヤマニーラ伯爵だけでなくセリーナ嬢本人が王族との婚姻を嫌がっているのよ。強制する事も出来るけれどそれでは誰も幸せになれないわ」


「すみません。私の行動のせいで」


「うふふ、貴方が謝れるようになったのはいい事よ」

母が嬉しそうに微笑む。


「それで、今日の王宮のおかしな様子になるのだけれど…」

「はいっ」

急に話が元に戻っておかしな声が出てしまった。


「陛下がヤマニーラ伯爵に頼んで今日セリーナ嬢を王宮に連れてきてもらうのよ。エリックもアイカさんを慕っていたからそれがわかれば状況が変わるかと思ってね。

ただ、この事をロザリーやシルキート公爵に知られたくないから王太子夫妻の居住地の雰囲気がいつもと違っているの」


「なるほど。では、私に話して良かったのですか」


「カイナンには貴方が何かに気が付いたら私の所に連れて来るように言ってあったのよ。

今までは、王太子の仕事とロザリーの事で余裕が無かったわよね」


「申し訳ありません」


「良いのよ。それでカイナンに頼んだの。彼は優秀よ。これから貴方の心強い味方になるわ」


「そうですね。今迄もカイナンだけは私に苦言を言ってくれました。その時は煩わしかったのですが今思うと私の事を思っていてくれたのがわかります」






私は自分の部屋に戻り、カイナンと今後の話をした。





その後バラモンは王太子を弟エリックに譲り一代限りの大公となった。エリック王時代の宰相となり、王を生涯支えた。

大恋愛の末に結ばれたロザリーとは子は無かったが生涯仲睦まじく過ごした。(と言われているが本当の所は王家の極秘文書を読まなければわからない)




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