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ドレス

落ち着いて来ましたので投稿を再開します。

ゆっくり更新します。


読んで頂けると嬉しいです。


「父上に報告しないといけないな」


アイカ達が帰った後の執務室にトニカート、ノイド、ライラがいる。


「こんなに次々と新しい物を出してしまうなんて」

「本当に、すごいというか、何というか」

「まぁ、父上と相談してくるよ」


『はあぁ』


3人のため息が部屋の中に響いた。





数日後のヤマニーラ伯爵家の執務室で当主ネイキン・ヤマニーラ伯爵、嫡男シュミット、次男トニカートがソファに座って話し合っていた。


「これが後染めの布です」

トニカートが出した布を二人が手に取っている。


ガイト村で染めた丸柄染めと縦柄染めの布だ。


「「はあぁ」」

「父上、兄上、ため息が大きいですよ」


「トニカート、何故次から次へと新しい物が出て来るのだ」


「今は柄替えの布団を準備しているところなんだがなぁ」


「あぁ、私もそう思いますね。ハハハ」


「「「ハハハ」」」


部屋の中に3人の乾いた笑いが響く。


「それで、トニカート、この布はどうするつもりだ」


「はい父上。ドレス用の布にして、セリーナに贈るのはどうでしょうか」


「セリーナか」


「そうだな。セリーナだけでなく王妃様にもお渡ししよう。色や柄違いの物なら問題ないだろう」


「王太子妃様はどうする?」


「兄上、私は必要無いと思います」


「そうだな。我が家がアイカの事で王太子と王太子妃を嫌っているのは皆、承知してるからな。やめておこう。もし、兄上が、シルキート公爵家が何か言ってきても気にしなくて良い。私がお相手する」


「はい、では、今年の社交シーズン始めにある王家主催の舞踏会に間に合うように手配いたします」


「頼んだ」


「あ、そうだ。父上も兄上も舞踏会に参加されますよね。母上と義姉上の物はどうされますか」


「要るな。準備しないと後が怖い。すまんが頼む」


「はい。承知致しました」







トニカート様がガイト村に戻られ、献上する為の布の試作が始まった。

機織りはモリーナさん。私は絞りの柄の担当なんだけれど  難しい。


国の最高位の方々なので同じな物は勿論、似ている物も避けなければいけない。

染め色はカイル兄が研究してくれる。

陛下や第二王子エリック様、ヤマニーラ伯爵、シュミット様の髪色や目の色を出すのに苦労しているみたい。



三ヶ月後、試行錯誤の末、何とか献上する事が出来た。今回は王妃様とセリーナ様だけで無く、セリーナ様のお子様双子のジェイン王子様、アイカ王女様用の織布も水色とピンクで染めて献上した。

とても綺麗に染まったと思う。


シュミット様から我が家とモリーナさんライドさんの家族に褒美をくださると言われたため

私達二家族で相談してドレスの絵画をお願いした。


「妻や母上の物は大丈夫だが、王妃様やセリーナの分は許可を得てからになる。それでも良いだろうか」


シュミット様は悩んでいらしたが聞くだけは聞いて頂けるようだ。


あの織布がどうなるか見たいのは皆同じだったので私達は頷いた。


「すぐに大量の注文が来るだろうから出来るだけの準備をしていてくれ」


シュミット様はトニカート様に向かって疲れたように微笑まれた。







社交シーズンは王家主催の舞踏会から始まる。ヤマニーラ伯爵は辺境伯爵の為領地を長く空ける事は出来ない。

毎年始めの王家の舞踏会に参加後領地に戻る。

しかし今年は違った。兎に角来客が多く、しかもほぼ全てが織布、布団などの特産品の売買依頼だった。


一ヶ月後、伯爵を王都に残し、伯爵夫人、シュミット夫妻はヤマニーラ領に戻った。

来客はまだ引っ切り無しにあったが領地を空けておかない為の処置だ。

夫人達も元々王都での貴族の付き合いを、苦手としている為伯爵を一人残し戻る事に問題はないようだ。



舞踏会は大成功だった。

国王夫妻、第二王子夫妻、ヤマニーラ伯爵家の独壇場と言っても差し支えないだろう。


ヤマニーラ伯爵夫妻、嫡男シュミット様夫妻が会場に入った時はまだ少し騒ついただけだった。

知り合いの方々が夫人達のドレスを見て話をしていたところに、第二王子エリック様がセリーナ妃、王子、王女と一段上の壇上に入られた。


王子、王女はまだ2歳だけれども、顔見せも兼ねて社交シーズン始めの王家の舞踏会に少しだけ顔を出す事になっている。


セリーナ妃、双子の王子王女はヤマニーラ伯爵家から献上の織布を使ったドレスや礼装だった。

そしてエリック王子も騎士団団長としての騎士服の中にセリーナ妃と共布を使っていた。


「「「おお」」」

「「可愛い」」

あちこちで感嘆の声がする。


王太子夫妻の後陛下、王妃様が壇上に姿を現した。


「「ほおぉ」」

「「まぁ」」

またしても感嘆の声。


ヤマニーラ伯爵とシュミットは顔を見合わせてニヤッと微笑みあう。

(父上、大成功ですね)

(そうだな。陛下やエリック様が共布を使うとは思わなかったな)

(この共布は今年の社交界で流行りますね)

(あぁ、うちの織布もな)

(良かったですね)

(あぁ、忙しくなるけどな)

(そうですね)

((はあぁ))


最近、ため息ばかりついている二人だった。



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