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絞り



次の日からカイル兄と私は練習用の白い布を染め始めた。とは言っても、カイル兄は薬師、私は糸紡ぎと機織りの仕事があるので、夜、二人揃った時に家の外に出て少しずつ進めていく。


染付液に漬ける時間や回数を変えて液と布の一番合う作業を見つけていく。

「カイル兄、この布を少しだけ摘んで縛ってもいい?」


「アイカ、何か思いついたのかい」


「うん。柄が出来るかなぁって思ったの」

愛佳の学校には親子でハンカチに絞りの模様を付けようという授業参観の日があった。愛佳の母は家に居たのに学校に来なかった。愛佳は一人でハンカチを染めた事を思い出した。

『あの時は寂しかったけれどおかげで絞りのやり方を思い出した』


アイカは糸を使って真ん中を一つだけ縛ったものと、布を縦に細くして三ヶ所縛った物を作った。


「これで終わり?」

カイル兄が不思議そうにしている。

「うん。染めてみて」


「わかった。どんな柄になるの?」


「わからない」


「わからない?」


「染めてみないとわからないの」


「良く分からないけれど、染めてみようか」


温めた液に浸していく。時間をおいて液から出す。

「この色でいいかな?」


綺麗な緑色に染まっていた。若葉の様な黄緑色。


「きれい」


「薬草も入れてみたんだ。この色はいいね。優しい色合いだ」


カイル兄もいろいろ研究しているから、この色は満足したみたい。

「洗ってみないと本当の色はわからないんだよ」

カイル兄は肩をすくめた。


「アイカ、縛った糸を切ってみて」


私は真ん中を縛った布をハサミを使って糸を切り開く。


「わぁ」

「おぉ」

柄が綺麗に入っている。花の様な模様だ。


「こっちのも見よう」

縦長の布を開く。


「すごい」

カイル兄が布を持ち上げて見ている。こちらは縛った所が線になりそこを中心に柄が入っている。

「アイカ、これは良いね」

「うん。良かった」


「お父さんに見てもらおう。呼んでくるよ」




「アイカ、どうしたんだい」

お父さんがカイル兄と一緒にこちらに来る。


「お父さん、これを見て」

柄の入った布をお父さんの前に出すと、お父さんが止まる。

「綺麗でしょう」

何も言ってくれないので私から聞く。


「これは柄だよね。どうしたんだ」


お父さんが驚いて布を見ているので私が今迄の事を話すと顎に手を当て長く考えていた。


「明日の朝、この布を持ってトニカート様の邸に行く。カイルもアイカも一緒に行くよ」


お父さんが真剣な表情で言うので私は首を傾げてしまう。

「アイカ、これは見た事がない柄だからトニカート様にどうするか聞かないといけないよ」


「えっ……はい」


「やっぱりね。そうなると思ったよ」

カイル兄がため息をついて言った。









短くなりました。



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