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ガイト村



今日、トニカート様の所に領主様から連絡が来た。糸車と機織り機を扱える人が見つかったらしい。あと2、3日後には到着するそうだ。


糸車と機織り機はガイト村の作業場に置いてある。あとは洗ったシロフを持ち込めば準備は完了だ。


糸車と機織りを教わるのはまずはお母さんとお姉ちゃんと私。まだ村の人たちにも話していないので私達だけで教わり、布が作れると分かったら村の人たちに説明する事になった。


「とうとう布が作れるのね。楽しみだわ」


「お母さん、まず糸を作るのよ」

夕食を食べながらお母さん、お姉ちゃんと話す。


「お父さんもこれから忙しくなるわね」

お父さんは『糸』『布』を纏める管理者になる事になっている。

「そうだな。上手く行くと良いな」


「そうだね。糸車を扱える人は家族でガイト村に来るそうだよ」

カイル兄はトニカート様に家の準備を頼まれた。明日私達家族で使ってもらう家を掃除する。直ぐに使えるようにと言われているので必要な物を相談中だ。


「シロフの布団を気に入ってもらえると良いなぁ」




シュミット様達がガイト村に着いた。

ノイドさんに案内されてトニカート様の邸に入って行く。



私達家族が『糸』についてトニカート様と話し合っていた時ノイドさんからシュミット様の到着を知らされた。迎えに出ようと立ち上がったところトニカート様が

「大袈裟にすると怯えてしまうといけないからここで待ちましょう」

と言われたのでそのまま部屋に残り話の続きをしていた。


トントントン

扉を叩く音がして、今まで一緒に話し合っていたライラさんが扉を開ける。私達は立ち上がりシュミット様達を迎えた。

「兄上、ようこそ」

トニカート様がシュミット様に手を出し握手をする。

シュミット様に続いて騎士様、女性と女の子、騎士様が入って来た。


「トーマス達も来ていたんだね」


「はい、顔合わせした方が良いと思いましたので」


私達家族は『糸』『布』の事でガイト村にいらしたシュミット様と言葉を交わした事がある。

令嬢アイカの時、最後に会ったのはシュミット様が10歳の頃だったので、随分大きくなったなぁ、なんてしみじみ思ってしまった。

今ではしっかりとヤマニーラ次期伯爵様として伯爵様を助けているのに。


「護衛の騎士のカナールとライド、糸車と機織りが出来るモリーナさんと娘のキラナちゃんだ」


「シロフ事業を纏めているトニカートです。こちらのトーマスさん家族はシロフを見つけた人達です」

トニカート様に続いて


「トーマスです。妻のナタリー、長女クラディ、長男カイル、次女アイカです。よろしくお願いします」

お父さんが挨拶する。私達もあたまを下げた。


「そうそう、ルーカス君はトーマスさんの息子さんだよ」

シュミット様の言葉にキラナちゃんが、ルーカスお兄ちゃんと呟いた。


「ルーカスをご存知なのですか」

お母さんがモリーナさんに聞くと出会った時の事や道中で私達家族の話を聞いていた事を教えてくれた。

その話は後でして今は糸の話をしよう、とお父さんに言われたのでお母さんとモリーナさんは二人で顔を見合わせて苦笑いだ。


その後、モリーナさんを交えて話し合い、明日朝から『糸』の作業場に集まる事になった。


「モリーナさんは家族でみえると聞いていたのですがモリーナさんとキラナちゃんのお二人ですか」


カナールさんがライドさんを見ている。

「その、私が一緒に住みます」

ライドさんが前に出て来た。


「今日から夫婦だな。おめでとう」

「おめでとうございます」

カナールさんや私達に言われてライドさんとモリーナさんは真っ赤になっている。


「家も準備しています。案内します。ライドとカイルは残ってくれ」

トニカート様に言われ私達とモリーナさんとキラナちゃんは部屋から出る。

ライラさんに案内されているモリーナさん達と一緒にトニカート様の邸を出た。


キラナちゃんがモリーナさんに何か言っている。

「どうしましたか」

ライラさんが聞くと

「ルーカス君からシロフの布団の話を聞いていたので家に布団があるか気になってるようです」

クスクス笑いながらモリーナさんが教えてくれた。

キラナちゃんはモリーナさんの後ろに隠れてしまった。

「あるわよ。とても暖かいからね」

お姉ちゃんが言うとキラナちゃんはとても嬉しそうに笑った。(可愛い)



…カイル…


トニカート様の邸に残ったのは、シュミット様と護衛のカナールさん、ライドさん、僕だ。


「兄上、ライドは兄上の護衛は続けるのですか」


「それは私も考えた。このまま護衛ではモリーナさんと別々に暮らさないといけないからな」


「ヤマニーラで暮らすのは駄目なのですか」

カナールさんが聞く。


「糸はガイト村で進めるからここに住んでもらいたい。ここは警備もしっかりしているしね」


「兄上、ライドを私の護衛にしてもらえませんか」


「そうだな、それが良い。ライドはどうかな」


「私はヤマニーラ家の騎士です。何処に行こうと問題ありません」

シュミット様とトニカート様が頷く。


「ライド、ここでは護衛だけでなく私の仕事も手伝ってもらうけれど良いだろうか」


「えっ」

僕は驚いて声が出てしまった。トニカート様の仕事の手伝いはノイドさんと僕がやっている。ライドさんも一緒に働くからその話のために僕はここに残ったんだろうか。


トニカート様がこちらを向く。

「カイル、君はこれから薬師の仕事を主にして欲しい。ガイト村も人が増えてきたから今までみたいに私の仕事の手伝いと薬師の両方は難しいと思う。

君はもう十分一人でやっていける。何かあれば私に聞きに来ても良いからね」


僕は驚いてトニカート様を見た。薬師の仕事は遣り甲斐があるし薬草を扱うのも好きだ。


「まだまだ未熟者ですが、……やりたいと思います」

僕はトニカート様の目を見てはっきりと答えた。




トニカート様は僕に薬師の家を準備してくれた。



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