身体が痛い
4歳になった。
私が生まれたのはサイライト王国の端の端、辺境ガイト村。お父さんは隣のトイル村で育った。次男の為自分で土地を開拓する必要がありお母さんとの結婚と同時に10年前から開拓が始まったガイト村に来た。
ガイト村の開拓は領主ヤマニーラ辺境伯爵の声掛けだった事もあり開拓が始まる時に家や最低限の生活用品、弓やナイフ、鍬などの支給があった。
サイライト王国はアイカが公爵令嬢だった時と同じスタイラス・サイライト王が治めている。2度目で命を落としてから然程経たずに転生したらしい。
家族は父トーマス、母ナタリー、長女クラディ8歳(私が生まれた時にツインテールをしていた少女)、長男カイル7歳、次男ルーカス5歳次女私アイカ4歳だ。
両親は村に接している森での狩りや植物採集、畑で野菜を作って生活している。
私達子供も手伝う。
予定通りというか、解ってはいたが貧乏だった。超が付くほどだ。しかし、私の一番欲しかった愛情はとても多い。
虹色の球体の言っていた記憶も生まれた時から1度目も2度目のものもあった。
今のところは愛佳の記憶が役に立っている。家事をしていたのでお母さんやお姉ちゃんの手伝いが少しは出来る。スポンジや洗剤などの現代日本では当たり前の物が無いこと、まだ小さいので少しだけしか手伝えないのがちょっと悔しい。
板を組み合わせて作った家は竃やテーブルや椅子のある台所と寝室兼作業部屋の二部屋。布団は1組しかなく敷布団も掛布団にしている。植物で編んだゴザの様な物を敷いて家族6人、くっ付いて寝ている。
板の上に寝ているも同じことだから、床が硬くて体が痛くなる。
愛佳の時も令嬢アイカの時も布団はあった。何とかならないかと考えていると記憶の中から【干し草のベッド】が浮かんだ。
「お姉ちゃん、干し草はある?」
「干し草って、枯れ草の事かなぁ」
お姉ちゃんと小川に来て洗濯中だ。この小川があるからこの場所でガイト村の開拓が始まったんだとお父さんが言っていた。
「うーん。どうかなぁ」
「何に使うの」
「寝る時に板が痛いから干し草を敷くといいと思うの」
「痛いって、あんなものじゃあないの」
お姉ちゃんは生まれた時から板だったから気にしてないみたいだった。私は愛佳や令嬢アイカの記憶があるせいで不満が出てしまう。
「枯れ草は駄目だと思うよ。虫がいるし腐ってくるわよ」
「えっ、そうなの」
「お父さん達が畑に腐った葉や草を入れてるわよ」
『腐葉土』作物を作るのに栄養を与える為に土に混ぜる。令嬢アイカの王太子妃教育での記憶にあった。
「アイカが頑張ってもう一枚敷物を編めばいいんじゃあないの。アイカは4歳にしては上手よね」
今使っているゴザも私が編んだ。前世を合わせれば30歳を超える私は、コツを掴んだからか編むのが上手いと思う。
「そうか、2枚重ねればいいのね」
私は干し草のベッドは諦め、ゴザを編もうと決めた。
ガイト村は5歳にならないと村の外の森へは入れない。危ないからとお父さん達大人が決めた。開拓が始まった頃は村の近くに獣が来ていたためだ。今では柵も作り大人が獣を狩っているので滅多に村の近くには現れない。それでも5歳までは駄目だと決められている。
ゴザを作る為の細くて長い植物、『葦』の様なもの、は森にしか無い。私はお父さんに頼んで刈ってきてもらった。それを干して叩いてを繰り返し、編んでいく。部屋に敷き詰められるほどの大きさになったのは冬になる前だった。
この年の冬は少しは寒さを凌げるといいなぁ。