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村の発展



トニカート様が村に来られてから村の様子が変わった。


ヤマニーラ伯爵から依頼された人達が初めに取り掛かったのは家を建てる事。これからシロフの作業をする為に人が増えていくので家を増やす。警備、大工、料理人なども村に来てくれる。


材料にする木は森にあるので、森の開拓をしながら家を建てていった。開拓した場所は家や作業所、シロフの畑になる。


柵はガイト村の正面は作ったけれど森の開拓が何処まで進むかわからない為、森側は簡易な物になっている。


シロフは沢山あればあるほど良いと領主様が仰っていたのでトイル村とガイト村で出来るだけ育てている。全てヤマニーラ伯爵の買い取り。トイル村もガイト村も以前より生活に余裕が出来た。村の皆も忙しいが充実している。


トニカート様はシロフだけでなく柄入り籠にも力を入れられ、村の人はシロフ事業の空く期間で柄入り籠や背負い籠を作っていく。


カイル兄と私は毎日トニカート様の所に行き、執事のノイドさんと侍女のライラさんに仕事を教わっている。

カイル兄はノイドさんの手伝いと薬師の勉強、私はライラさんの手伝いとほんの少しだけノイドさんの手伝いもしている。







シロフ事業が始まって三年経ったこの秋、とうとうシロフ布団を販売する事に決まった。


シロフ事業は領主ヤマニーラ伯爵家主導の為、何事もガイト村で勝手に決めてはいけない。


ガイト村としてはマークさんに布団を扱って欲しいが、領主様は一つの商会を贔屓する事は出来ない。商会との仲が悪くなると領内が混乱してしまうからだ。

シロフ布団はガイト村から領主様が一括買取をして、領都の倉庫に入れて領内の商会へ均等に売買すると決まった。


マークさんには村長さんが謝っていたけれど、その代わりにトニカート様からは布の売買はマークさんに一手に引き受けてもらいたいと言われ、驚いていた。

ただし、布を生産している場所がガイト村だとわからないようにしなければならないからその辺りが難しいらしい。



糸車と機織り機は壊れていた古い物が見つかって今は修理中。修理が終わり次第同じ物を何台も作る予定になっている。


サーラン伯爵領内で糸や布を作っている人の領内の出入りは厳しく監視されており、せっかく手に入れた糸車と機織り機の扱い方を知る方法が無く、ヤマニーラ伯爵の下で研究されているがあまり成果が出ていない。


私も愛佳の記憶では曖昧だった。





そんな時、王と第二王子妃セリーナ様にシロフ布団を献上したいとヤマニーラ伯爵から話があった。


「さて、どうしようか」

トニカート様が丸いテーブルを囲んで座っている面々を見て話す。


トニカート様の右からノイドさん村長さん、カイル兄、お父さん、私、ライラさん、の順に座っている。


シロフ事業が始まってから大事な事を相談する時に集まる七人だ。


お父さんがカイル兄や私は子供だからこの席にいるのはおかしいと言ったけれど、トニカート様がシロフは子供の好奇心から始まっているので大人では考えつかない事を思い付くかも知れないから会議に参加して欲しいと言われた。

お父さんは『トーマスさんの家族が見つけたのですよね』と言われて苦笑いしていた。



「布団の布を最高の品質の物にします」

「それは、そうなのですが、もう少し何かありませんか」

村長さんの意見にトニカート様が返す。


「布に刺繍をするのも良くありますね」

ライラさんが呟くように言った。


「洗い替えの布団掛けとか」

「何?アイカ」

小さな声で言ったのにカイル兄には聞こえていたみたい。

「一つの布団に数枚の替えの布があると汚れても洗えるかなぁって思ったんだけれど、王様は洗ったりしな

いよね。汚れたら新しい物に変えるだろうから駄目だよね」


「アイカ、どういう事かな。布団を何枚も準備するのでは無いのか」

お父さんに聞かれて愛佳の記憶を思い出して話す。


「布団は普通に作って、その布団をもう一枚の布団用の布に入れるの。そうすると、布団が汚れたら外の布を外して洗えばいいから洗濯がやりやすいかなぁと思って。でも、王様は汚れても洗濯はしないだろうから…要らないと思う」

だんだん声が小さくなってしまう。


私達、村人と違って王様は洗ったりしなくてもいいんだろうな。


「それだ」


「「えっ」」

トニカート様が大きな声で言うのでカイル兄と私はびっくりした。


「トニカート様どうしましたか」

ノイドさんが落ち着いた声で聞く。


「布団の替えの布を高級にして違う刺繍をするんだ。花や動物や星などその日の気分で違う布団で寝られる。何枚も布団があると場所を取るからね。アイカの言った通り汚れても直ぐに洗えるのも良いだろう」


「いいですね」

「うちの布団もそうしたいな」

村長さんとカイル兄も賛成みたいだ。


「それで進めましょう」

「そうですね」

ノイドさんもライラさんも頷いている。


「アイカ、うちの布団も替えの布が欲しいな」

お父さんが私の頭を撫でて言った。

私、もうすぐ12歳になるのにお父さんは直ぐに頭を撫でてくるからちょっと恥ずかしい。


「父に相談します。ノイド、手紙を書くので届けてください」

トニカート様が立ち上がったので皆立ち上がり頭を下げる。

会議終了だ。



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