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手伝い



村会議が終わり部屋にはトニカート、村長、トーマスの三人がトニカートを正面に向かい側に村長とトーマスが椅子に座っている。


「トーマスさん、シロフの布団も糸もそして種を食べるのも全てトーマスさんの家族が見つけたのですね」


「はい」

トーマスが頷く。

「柄入り籠や背負い籠もです」

村長が付け足す。


「トーマスさん、どうしてそんなにいろいろな事が考えついたのか教えてもらえますか」

トニカートからは有無を言わせない圧力がかかる。


「家族で話をしていて出来た物です。このようにしたら良いかなぐらいの気持ちで作ってます。作り方を教えてからは村の奥さん達の方が工夫していたと思います」


「はじめに思い付く事が凄いのですよ」


「背負い籠は子供が沢山運ぶにはどうしたら良いかというのが始まりです」

トーマスは全てを話してはいないが嘘は吐いていないから、と自分を納得させて話す。


「シロフはどうして見つけましたか」


「子供の好奇心からです。私の家ではゴサを敷いて寝ていたのですが、今思うと痛くて寒かったんです。私はこんなものだと思っていたんですけどね。子供がシロフを使って何とかならないかと言い出しました。


色々失敗もありましたけれどどうにか布団が出来ました」


「糸はどうですか」


「これも子供達です。シロフ布団を作る時にシロフ同士が絡まったり指に付いたものを引っ張ってみたら糸になっていました」


「偶然の産物なんですね」


「はい」


「この種を食べるというのは?」


「これは分かりやすいです。村長さんが領主様から頂いた馬車の馬が畑に混ぜるつもりの種を食べている所を見て、食べられるかもしれないと試しました」


「子供なのに初めての物を食べるなんて凄く勇気がありますね」


「私は危ない事をするなと怒りましたけれどね」


「ハハハ、親御さんからするとそうですよね」


「お陰で私達村人は美味しい物が食べられるようになりました」

村長が微笑んで言う。


話を聞いたトニカートは少し悩んで…トーマスに向かって話す。

「トーマスさん、糸の事は村の中でもこの三人とトーマスさん家族だけが知っています。それで、これからトーマスさんのお子さんに私の手伝いをお願いしたい。

村長から読み書き計算を習っていると聞きました。これから私の近くにいる人は糸の話を出しても大丈夫な人が良いと思っています」


「三人共ですか?」


「三人見えるのですね。家の仕事もあるでしょうから二人お願いしたいのですが大丈夫ですか」


「わかりました。一番下は8歳です。そんな子供でも良いのでしょうか。実は糸を見つけたのが一番下のアイカなのです。好奇心旺盛な子なのでやりたいと言いそうです」


「構いません。糸を見つけた子ならこれからが楽しみですね」

三人で笑う。

トニカートは茹でシロフを食べ、水を飲んで、うんうん頷いた。


「先ほどの村会議では言えませんでしたが、糸と布の事はトーマスさんに纏めてもらう予定です」


「えっ」


「村長さんはシロフ布団と飾り籠をお願いするからこれ以上は仕事が忙し過ぎてしまうでしょう」


「そうして貰えると助かります。流石に仕事が多過ぎです」

村長がちょっと不貞腐れているように見える。


「またお願いする事があると思います。よろしく」


「「こちらこそよろしくお願いします」」






朝、起きるとお父さんとお母さんはもう台所にいた。顔を洗っているとお姉ちゃんとカイル兄も起きてきた。


「皆、席に着いて。昨日のトニカート様からの話をするよ」

お父さんに言われて席に座る。


「言われたのは以前村長さんが言っていた通り、トイル村はシロフ畑、ガイト村で作業だな」


皆頷く。


「シロフ布団は秘匿の為、ガイト村を柵で囲って出入り口に警備をおく。村に作業小屋を三つ建てる。一つはシロフの種を取ったりほぐしたりする。もう一つは布団を作る。三つ目は、これは特に秘密だから村の人には言って無いけれど、糸を作り布を作る小屋になる」


「もう糸を作れるの」


「いいや、まだだ。当分は倉庫だろう。それから糸と布の仕事はお父さんが纏め役になったから皆、協力して欲しい」


「すごい」

「お父さん頑張って」

私とカイル兄が言う。


「それでトニカート様が我が家から手伝いをする者を二人出して欲しいと言われたんだ。糸の事があるため内緒にしないといけないからね。我が家の者が良いそうだ」


「私行きたい」

私は直ぐに手を上げた。

「アイカは言うと思ったよ」

「へへへ」


「クラディとカイルはどうする」


「私は機織りの方が興味があるわ。糸が出来たら布を織るのでしょう。出来ればそちらがやりたいと思う」

お姉ちゃんはよく考えているんだ。私は面白そうと思って簡単にやるって言ったのに。


「僕はやりたい。トニカート様に薬師の事も教えて貰えると嬉しいかな」


「そうだな。カイルは薬草の事を調べるのが好きだから薬師はいいかもしれないな」


「もちろん仕事もきちんとするよ」


「ハハハ、心配はしてないよ。後でカイルとアイカはトニカート様の所に挨拶に行こう」



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