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シロフ事業



「また大騒ぎになるな」

「そうですね」

お父さんとお母さんがため息を吐いて話している。

茹でシロフは今からもう一度作って村長さんの家に持って行く。

お父さんは昼からの仕事を休んで話しに行くらしい。

「お父さん、村長さんと茹でシロフが食べられて良いな」

「そうだな。そう思って行けば良いか」

「お父さん、行きたくないの?」

「そうじゃあないけれど、また村会議になるよなと思うとな。村長さんにまた苦労かけるかなぁと思ったんだ」

「そうなの?」

「たぶんね」


「食べる物が増えて、美味しいのだから良い事よ」

お母さんに言われて、お父さんは『そうだな』と言って出て行った。


茹でシロフは村会議で話す事になった。


村会議の結果、茹でシロフはシロフの布団の事業が落ち着くまで村だけで食べるとなった。






私はこの頃令嬢アイカの記憶を思い出す事が多い。

村長さん達から読み書きを教わる時にはわかっている事が多いけれども知らないふりをして勉強していた。


ルー兄に布の産地がサーラン伯爵領と聞いた時にも、あぁそうだった、と思った。


最近になってヤマニーラ伯爵が伯父だったと思い出した時には何故今迄わからなかったのか、自分を責めたくなった。大好きな家族だったのに。


ネイキン・ヤマニーラ伯爵は父シルキート公爵の弟でヤマニーラ伯爵家に婿入りした。辺境を守るヤマニーラ伯爵が王都に来るのは1年に一度だけれど、王都に来た時にはシルキート公爵邸に挨拶に来て、宿泊もしていく。その都度伯父、伯母、従弟妹達は私に愛情を注いでくれた。


一緒に食事をし、話をして、笑い合う。ヤマニーラ伯爵家のおかげで少しの間だけれど家族の愛情を知る事が出来た。


従弟妹のシュミット、トニカート、セリーナは私をアイカ姉様と言って慕ってくれていた。


婚約破棄され、修道院へ入れられてからも三人は手紙をくれた。寂しく辛い修道院生活の中での心の支えだった。






ヤマニーラ伯爵家のトニカートが大きくなって私の前にいる。


「今日からガイト村とトイル村のシロフ事業の纏め役になったトニカート・ヤマニーラです」

村の人達に挨拶をしたのはヤマニーラ伯爵次男トニカート様。令嬢アイカの時の従弟だ。


「トニカート様はトニカナリさんと言う名前で薬師もされている。ガイト村に住みながらシロフの事と薬師の仕事もされる」

村長さんが皆に話す。


「トニカート様から話があるので今日、村会議をします」





…村会議…



「皆さん、先ずは謝罪をします。

薬師としてガイト村に来るという話を三年も長引かせてしまい申し訳ありません」

トニカートが頭を下げる。

「トニカート様、やめて下さい。こうやって今来てくださっているのですから」

村長や村人がトニカートに頭をあげるように促した。


「トニカート様、シロフの話をしましょう。皆、聞きたがっています」


「そうですね。

では、父から申し渡された事を話します」

皆、姿勢を正す。


「シロフ事業は秘密に進めます。秘匿します。ガイト村の村民ではない人は例え親族にでも話しては行けません」


トニカートは村人を見回し話す。


「ガイト村に作業小屋を三つ建てます。一つは収穫したシロフの実を置いたり洗ってほぐしたものを入れます。もう一つはシロフ布団を作ります。三つ目は今は使いませんがそのうち使う予定です」


「三つ目は何に使うのですか」


「まだ決めていませんが必要になると思います。それまでは倉庫にしても良いですね。それから井戸も作ります」


水を一口飲む。


「同時に村を囲うように柵を作ります。秘匿の必要とこれからガイト村が栄えてくると盗賊なども出る可能性があるので柵を作り、何箇所か出入り口を作って警備を置きます」


「村の出入りが簡単に出来ないのですか」


「村の人は大丈夫です。あと商人のマークさんですね。その他の人はその都度考えます」


「なるほど」


「出来れば柵の中にシロフの畑を作りたいのですが、作業小屋が出来てから決めます」


「トイル村はどうするのですか」


「トイル村も私が責任を持ちますが、普段はガイト村にいるのでトイル村はトイル村の村長に纏めてもらいます。トイル村にはシロフの畑を作ります」


「畑だけですか」


「シロフの事を秘匿するにはガイト村だけで作業をするのが良いので畑だけになります」


「わかりました」


「何か質問がありますか……」


トニカートは水を飲み隣にあった茹でシロフを手に取る。

「これは何ですか。皆さん食べてますよね」


「茹でシロフです。殻を割って中身を食べます」


村長が茹でシロフの殻を割りトニカートに渡す。

「これは、報告がありませんでしたよね」

トニカートが口に入れる。

「美味しいですね。薄いですが塩味が付いてますか」


「トニカート様すみません。これは白シロフの種を茹でた物です。食べられる事を知ったのがつい最近だったので連絡していませんでした」


「なるほど。これは売れると思いますが……あまり一度に色々な事をするのは止めておきたいですね」


「私達も村会議で村だけで食べると話し合っています」


「そうですね。どうして食べられるとわかったのですか」


「トーマスの家族が見つけました」


「また、トーマスさんですか」





トニカート、村長、トーマスを残して村会議は終了した。



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