まずは、腹ごしらえ。
フラン君との関係は後々考えることにして、今は空腹を満たすことを優先しようとアルメリアを追う。
従業員用の食堂であろう4人掛けのテーブルと家庭的なキッチンが設置された部屋だった。
鍋が火にかけられ、トントンと子気味良くホウレンソウに似た野菜が切られている。
漂ってくるいい匂いに再び腹の虫が鳴き始める。
「すぐにできますから待っててくださいねー。」
ぴょこぴょこと動く耳にはしっかり聞こえていたらしい。
「何か手伝うよ。」
恥ずかしさを隠しながら、声をかける。
「ありがとうございます。そこの引き出しから食器を出してもらえますか。」
指示通りセッティングしていると続々と料理ができてくる。
目玉焼きやパンといった見慣れた料理のほか、丸いきゅうりのようなものや血のように赤い人参風食材が入っているスープが並べられた。
よし。とアルメリアが手を打つ。
どうやら完成したらしい。
そこにタイミングよくフラン君が入ってきて3人で朝食タイムとなった。
見たことのない料理だったが、空腹に耐えかねて恐る恐る口に入れると、滅茶苦茶に美味しかった。
神様からの手紙に料理上手のハイスペックにしたと書いてあったことを思い出す。
そこだけは感謝してもいいか。と機嫌よく朝食を終え、アルメリアと2人で片づけをする。
ちなみに、フラン君は洗濯に向かいました。全然話せなかった・・・。
うちの従業員はとても働き者らしく、2人とも僕が起きるころにはすでに仕事をしていた。
料理はおいしい、部屋だって築年数は経っているが綺麗、感じの良い従業員。
そこで生まれる疑問はなぜお客さんが全くいないのか。その1点である。
おおよそ繁盛しない理由が見つからない。
「・・・さん?トーヤさん?どうしましたか。」
考え事に没頭しすぎたらしい。
アルメリアの可愛い顔が目の前にある。パッと距離を開け、動揺を隠す。
「あ、ごめん。何かな?」
「お皿、もう綺麗になっていますよ?」
手元を見ると拭いていた皿は完全に乾いていた。
「あとは一人で大丈夫ですから、トーヤさんは休んでいてください。」
休んでいいといわれてもやることがないので困ってしまう。
と、思ったが、仕事ありました。
宿泊客0人の現状を打破しないといけませんでした。
応援ありがとうございます。
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