寝落ちしたようです。
―気づいたら朝でした。
どうやら寝落ちしてしまったらしい。窓から見える空の色が茜色から青色に変わっている。
そして、クラナイに来たのも現実だったらしい。
かつての僕の部屋とは似ても似つかないシンプルな部屋がそれを証明している。
いつまでも寝転がっているわけにもいかず、床に足を下す。
んっと伸びをして立ち上がった。
まずはアルメリアかフラン君に会わないといけないだろう。
せっかくだから探索しながら降りようと決めて部屋を出た。
まずは、2階から歩いてみる。僕の部屋を除いて残りは客室らしい。
201~205と各部屋に番号が割り振られている。
まぁ、誰もいないんだよな・・・。と昨日の宿帳を思い出してため息をつく。
ふと思い返して、部屋に戻ってリュックを漁る。
神様からの手紙を開き、昨日は読み飛ばしていた箇所を注意深く確かめる。
お主は穏やかな暮らしができればよいと言っていたが、それではつまらんと思ってな。
宿屋をほどほどに廃れた仕様にしたから頑張り給え。
じゃねえよ!思わず手紙を破り捨てそうになり、何とかこらえる。
ほどほどどころか客一人もいないぞ。
僕の理想の穏やか異世界ライフが早くも音を立てて崩壊した瞬間だった。
―5分ほど頭の中で神様への悪態をつくと、ようやく落ち着いてきた。
とりあえず現状を確認しよう。1階へ降りてフロントに向かう。
足音に気付いたのか何やら作業をしていたアルメリアがこちらを振り向いた。
「おはよう。アルメリア。」
「おはようございます。トーヤさん。昨日はお疲れのようだったので、起こさずそのままにしてしまいました。」
どうやら気を使ってくれていたらしい。
「ありがとう。おかげさまでよく眠れたよ。」
実際、碌に運動をせず、ゲームにアニメ三昧だった僕は肉体的にも精神的にも疲れ切っていたのだろう。
せっかくなら、肉体は丈夫なように神様に頼んでよけばよかったかな、とも思う。
そんなことを考えていると、ぐぅと腹の虫が鳴いた。
慌てて腹を抑えてアルメリアを見る。
ふふっと笑う彼女にはしっかり聞こえてしまったらしい。
「昨日から何も召し上がっていないですし、仕方ないですよ。今、準備しますね。」
広げていたファイルを畳み、フロント裏にある部屋へと消えていく。
僕もついていこうと歩き出したとき、ガチャリとドアが開く音が聞こえた。
見回すと、右端の部屋から箒と塵取りを抱えたフラン君と目が合う。
「おはよう。フラン君。」
「・・・おはようございます。」
不機嫌そうな声でぼそりと挨拶をするとさっさと隣の部屋に入ってしまった。
うーん。嫌われてるなぁ。と苦笑が漏れる。
やはり、昨日女の子と間違えたせいだろうか。
あの容姿だ。本人が気にしていることだったのだろうし、少しずつ仲良くなるしかないだろう。
サブタイのネタバレ感・・・
サブタイつけるのは難しいですね。