プロローグ 02
2話目です。
プロローグはこれで終了。
「一度死んでしまったからな。元の世界にも戻すことはできん。その代わりにお主の望む世界に
転生させてやろう。」
この上なく王道な展開である。しかし、世界まで選べるのは良い。
「マジすか。『クラッド・ナイト』に行けたりするんですか!?」
「なに?くら・・・?というか、急にイキイキしだしたな。」
「『クラッド・ナイト』。僕のいた世界で大ヒットしているゲームです。アニメ化もされていて
僕は最新回を見るために急いで帰る予定だったんですよ。」
通称クラナイ。王道の剣と魔法のRPG。プレーヤーは勇者となり、仲間とともに魔王を倒す旅に出る。
綺麗なグラフィックと魅力的なキャラとの恋愛模様も取り入れたストーリーが好評なゲームだ。
あ。思い出したらちょっと腹が立ってきた。最新回を1週間楽しみにしてたのに・・・。
そんな僕の雰囲気を察したのか慌てた様子の神様続けた。
「そ、その、『くらっどないと』というゲームの世界に転生することも可能じゃ。お主の望む能力の
付与して送ろう。」
『クラッド・ナイト』が完全にひらがなだった。そんなところも現実世界のおじいさんのようだ。
しかし、世界だけでなく、能力も自由自在とは。なかなかの好条件ですね?
悪くない。自然と笑みがこぼれる。
「じゃろう!なんでも言ってくれ。大概のことは叶えよう。」
なんでもと言われると迷うな。王道の勇者、魔術師、思い切って性別を変えようか。と考えを巡らせ、
思いついた。
「では、転生先は『クラッド・ナイト』。能力は特にいらないので宿屋の主人にしてください。」
「は?」
目が点になるとはこのことなのだろう。ついでに口も開いている。
「ヤドヤノシュジン?宿とはあの宿か?」
「はい。宿泊施設のことです。」
「勇者とかではなく?戦えないぞ?」
「それで構いません。ゲームは好きですけど、実際戦うとか嫌です。クラナイの世界で穏やかな暮らしができれば満足です。」
伊達に文化部系男子高校生をやっていない。こちとら、体育の授業ですらサボるレベルである。
宿屋でもやりながら憧れのキャラ達に奇跡的にエンカウント出来ればそれでいい。
そう伝えると神様は不満げながら、了承してくれた。
「本当にそれだけでよいのか?もっと何かあるじゃろ。」
うーん。と考えて思いついた。
「それでは、従業員としてケモ耳美少女をお願いします。」
「ケモ・・?お主としゃべっていると知らぬ単語が続々出てくるの。」
「ケモ耳は獣、犬や猫の耳、尻尾がついたキャラのことです。」
「なるほど。ケモノの耳でケモ耳か。分かった。用意しよう。」
さすがは神様。理解が早い。
これで思い残すことはない。お願いします。と頭を下げる。
「では、願い通り『くらっどないと』の世界に宿屋の主人として送ろう。街の人々が
不審がらないよう設定しておくから、あとは適当に楽しんでくれ。」
急にぞんざいになった神様がすいっと右手を挙げると目の前に観音開きの扉が出現した。
「では、行ってきます。」
扉に手をかけ、神様を振り返る。
「うむ。何かあれば、頭の中で呼びかけてくれ。必要なら手を貸そう。」
「ありがとうございます。」
心強い一言をもらい、いざ、『クラッド・ナイト』の世界へ!
次回からはクラナイの世界で透弥くんが頑張ります。