仕事開始
翌日、いつものように3人で朝食を食べながら今後について話す。
「今日からは僕も2人の仕事を手伝うよ。色々教えてもらえる?」
昨日の夜1泊の料金も知らなかったことを踏まえて出した結論はまず、この宿について知るということだった。
そう説明すると、2人は納得して今日の僕のスケジュールを考えてくれた。
話し合った結果、今日はアルメリアについて仕事をすることになった。
これも恒例となった皿洗いをアルメリアとしてから仕事に移る。
「じゃあ、食材の買い出しに行きましょうか。」
アルメリアがエプロンを外して外出の準備をし始めた。
僕も一度部屋に戻って準備をする。
まぁ、持ち物はほとんどないのでとりあえず昨日と同じように神様がくれたリュックを持って行こう。
1階へ降りていくとアルメリアは既に玄関で待っていた。
「お待たせ。」
アルメリアが持っていた食材を入れるのであろうカゴを受け取る。
アッと口を開けたが、僕が何も言わず頷くと小さく「ありがとうございます。」と言った。
母親と買い物に行ってた時の作法が役に立ちましたね!
何せ、小さいころから女の子に必要以上の荷物を持たすなと厳命されてきたのだ。
ありがとう母さん。可愛い女の子に感謝されたよ。
「じゃあ、行きましょうか。」
アルメリアが持っていたつばひろの帽子を被りドアを開けた。
昨日は可愛い男の子。今日は素敵な女の子とお出かけです。
そしてやって来ました、商店街。
昨日フラン君と歩いた道をアルメリアと歩く。
「今日は、何を買う予定なの?」
いくつか食材を売っている店を素通りしたアルメリアに聞いてみる。
「はい。私がいつも野菜を買うお店があるのでとりあえずそこに行きます。」
ほう、行きつけというやつか。
「アルメリアが毎日買い出しに行ってるんだよね。大変じゃない?」
宿泊客がいること自体少ないとはいえ、全く食材を買わないわけにいかないだろう。
それなりの量になるのでは?
「そんなことないですよー。買いだめするので3日に1度ぐらいで済みますから。それに、私結構力持ちなんですよ。」
そう言って「むん。」と力こぶを作る。
うん。可愛い。可愛いけど、あまり説得力はないね。
疑いの目を向けていると、
「あ、疑ってますね?本当に凄いんですから、今日見ててくださいね。」
つーんとそっぽを向いてしまった。
ご機嫌を損ねてしまったらしい。
「アルメリア?ごめんね?」
こういう時は謝るに限る。
「じゃあ、アルって呼んでください。それで許してあげます。」
依然ツンとした態度で言った。
「えっと、アル?」
突然のリクエストに戸惑いながら呼んでみる。
「はい。これからはアルって呼んでくださいね。」
にっこり笑いながらこちらを覗き込む。
よく分からないけど、機嫌が直って何よりです。