クエスト
というわけで、諦めて食事に専念しよう。そうしよう。
だって、無茶苦茶美味いからな!
「そういえば、お二人はここを拠点にしてるんですか?」
鶏肉のようなものをいただきながら尋ねる。
「いや、俺たちは隣街のキイナにあるギルドに所属してるんだ。今回はクエストの関係でこっちに来てる。」
おそらく3杯目であろうジョッキを空けながら答えてくれた。
酒強いなこの人・・・。
「どんなクエストか聞いてもいいですか。」
ゲームでやっていたころと違うのだろうか。
興味本位で聞いてみる。
「あぁ。今回受けたのはクレイ草の採集だな。トゥランの森にあると聞いてこっちに来たんだ。」
クレイ草の採集は初級のクエストだったはずだ。
2人はそんなに弱そうに見えないのだが・・・?
しかも、僕がゲームでやっていた時はトゥランの森ではなく、ロレンス草原で簡単に採集できたはずだ。
トゥランの森はそこそこの魔物が出るのでスライムぐらいしか出ないロレンス草原の方が楽だろう。
「あの、クレイ草ってロレンス草原では取れないんですか?」
つい口に出してしまった。
あの神様のことだ。ゲームと完全に仕様が一緒とは限らないのに。
焦って2人を見るとポカンとした顔をしていた。
「ロレンス草原にクレイ草が?そんな話聞いたことがないぞ。」
「・・・誰に聞いたんだ?」
グラッドさんもダンさんも不思議そうではあるが、ロレンス草原という地名は否定しない。
クレイ草があるかはともかく、ロレンス草原自体は存在しているらしい。
「いや、僕も噂で聞いただけで、確証はないのですが・・・。」
ここは適当に濁すに限る。曖昧に躱してみると、
「本当にあるなら、トゥランより危険が少なくていいがな。」
グラッドさんが考え込む。
うん。回避できてなかったね。
「あの、本当にあるかは分からないですよ?」
「ロレンス草原ならここから近いしそれほど手間でもないだろう。」
ダンさんも乗り気である。
これでクレイ草なかったらどうしようか。
「そうだな。明日行ってみるか。」
あぁ。決定してしまった。
僕が焦っているのがわかったのか、グラッドさんがニヤリと笑う。
「安心しろ。もし無くてもトーヤを責めたりしないさ。」
どうやら行くことは決めたらしい。
僕もゲームとどこまで同じか知りたいしいいか。
「分かりました。もう止めません。よければ本当にあったか教えていただけませんか。」
そう提案すると快く引き受けてくれた。
そろそろ夕方になってしまう。2人に断り引き上げることにした。
ちなみに、代金はフラン君が支払いました。
僕お金持っていないからね。しょうがない。
夕食の手伝いもあるので少し急ぎ足でカルミアに帰る。
今日はお客さん来てたらいいなぁ。
・・・0人でした。明日また頑張ろう。
余談ですが、フラン君と打ち解けたことを知ったアルメリアがちょっと拗ねてました。