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冒険者

噂の冒険者が集まる食堂は2階建ての大きな建物だった。

日本でいうところの大きな居酒屋風だ。

まだ昼間なのに、そこかしこのテーブルで楽し気に酒を飲みかわしている。

未成年だった(今もそうだが)僕には縁のない空間に慄いている間にフラン君が話をつけたらしく、

屈強ながらやさしそうな黒髪と金髪お兄さん2人のテーブルに相席させてもらうことになった。

近づくと、

「俺はグラッド。こっちはダン。冒険者をやっている。」と爽やかな挨拶を返してくれた。

なるほど、黒髪のやや細身な方が、グラッドさん。金髪で筋骨隆々の方がダンさんか。

「トーヤ・ガレスです。カルミアという宿屋をやっています。よろしくお願いします。」

握手を交わして、席に着くとすぐに店員さんが注文を聞きに来る。

酒を頼むわけにはいかず、お茶を頼むとグラッドさんが半強制的にビールに変えてしまった。

聞いてみると、この世界では15歳から飲酒可能らしい。

せっかくだし、飲んでみるか。

ちなみに、フラン君は見た目でオレンジジュースを注文されていた。

当人は、慣れているのか特に何も言わず、受け入れている。

「トーヤはかなり若いのに、主人とは凄いな。」

グラッドさんがグイっとジョッキを傾けながら言う。

まぁ、そうなるよな。

「もともとは祖父の持ち物だったんですよ。それを先日引き継いだんです。」

この質問は予想していたので、神様が考えた設定をそのまま話す。

「なるほどな。それで、こうやって情報収集してるわけか。凄いな。」

真正面から褒められて思わず戸惑う。

思えば、前世では超平均的なスペックだった故ほとんど褒められるという経験をしてこなかった。

反応に困っていると良いタイミングでビールと食べ物が運ばれてきた。

嬉しそうに受け取ったグラッドさんが僕にもジョッキを差し出してくる。

「じゃ、乾杯するか。ダン、ボウズも準備いいか。」

無言でジョッキを掲げるダンさんとボウズ呼びにややひっかりを見せているらしいフラン君もグラスを持った。

それに倣って僕も掲げると「乾杯!」とジョッキとグラスがぶつかり合う。

勢いよく飲む眼前の2人を真似てゴクリと飲む。

うん、苦い。

顔に出ていたのか、グラッドさんが豪快に笑う。

「はっはっは。流石にビールは早かったか。」

馬鹿にしているわけではない子気味良い笑いに僕もつられる。

「みたいです。お二人みたいには中々いかないですね。」

「まぁ、最初から美味いと感じる奴の方が珍しいからな。徐々に慣れていけばいいさ。」

ダンさんもうんうん。と頷いている。

てか、喋らないなこの人・・・。

ほれ。と押し出された焼き鳥のようなものをいただきながら本題に戻る。

「それで、お二人から見て宿屋に求めるものって何でしょう。」

「それなんだがな。正直、俺ら冒険者にとって宿ってのはただ泊まって飯食うところなんだよ。

ま、飯がうまかったり、綺麗だったりすりゃあ、魅力的だがな。」

「一番は安さだ。」

ダンさんが喋った!

体格に見合った渋くていい声だ。

「グラッドさんも安さが一番ですか。」

僕が良くわからない感動に浸っていると、フラン君が話を進めていた。

「あぁ。最低限揃ってりゃあ安いのが一番だな。」

うーん。安いといっても相場が良くわからん。

ゲームでプレイしているときはあまり気にしたことなかったしな。

今後の参考に聞いておくか。

「具体的にいくらぐらいなら泊まっていいと思いますか。」

「俺らが良く使う宿は大体300~500ゲインってとこだな。」

なるほど、わからん。

確か冒険者の初期装備が300ゲインぐらいだったか。

「ちなみにうちの1泊の料金は450ゲインです。」

僕の戸惑いを感じたのかフラン君が補足してくれた。

高いわけではないけど安いわけでもないって感じか。

となると、余計に+αが必要だな。

でも、これ以上お2人に情報を求めるのは難しそうだ。

今日は相場と基本的な情報が得られただけで良しとするか。


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