約束
ブクマ、評価ありがとうございます。
励みになります!
僕にとって、街に来て初めての外出のためフラン君に案内してもらう。
これから向かうところは冒険者が良く利用する食堂らしい。
にぎやかな大通りを歩いていく。
フラン君が道すがら、あそこは青果店、雑貨屋、防具店と言葉は少ないながら、教えてくれる。
ゲームでは分からなかった街の雰囲気が味わえるのは楽しい。
ついつい店をのぞいて寄り道をしては、「行きますよ。」の一言で連れ戻される。
しっかりしてるなぁ。
「そういえば、フラン君はいくつなの?」
見た目は10歳ぐらいに見えるけど、すでに働いているし、ご両親はどうしているのだろうか。
「143歳ですが?」
・・・?幻聴かな?
「えーっと。フラン君年齢は?」
「だから、143歳です。」
「ひゃくよんじゅうさんと言いますと、143ですか」
「はい。僕は小人族ですから。」
小人族。クラナイの世界だけでなく、ファンタジーにおいて定番のその一族は長命でその名の通り背丈が大人になっても人間の子供ほどにしかならない。
「解雇しますか?」
こちらを睨みながら問うてきた。
なぜそうなる?
「解雇なんてしないよ。。どうしてそんなことを言うの?」
昨日のアルメリアとのやり取りを思い出す突然の話に戸惑う。
こんなにかわいくて仕事のできるフラン君を解雇するわけないのに。
フラン君は僕の答えを聞いてポカンと口を開けている。
そんなに不思議なことを言った覚えがないのだけど・・・。
「今までの雇い主は僕の容姿が変わらないことを気味悪がった。最初は小人族であることも
気にしないと言っていたくせに・・・!」
涙目になりながら、両手を握りしめ叫ぶ。
その痛々しさに思わず抱き寄せる。
「約束するよ。僕はフラン君を追い出したりしない。」
「本当に?」
涙を流しながら縋るように見上げてくる。
「本当に。指切りしようか。」
「指切り?なんだそれ。」
そうか。この世界では指切りが存在しないのか。
ぽんぽんと頭を撫でてから離れ、膝をついて目線を合わせる。
「右手の小指を出して。」
自分も右手を出しながらフラン君に言うと、首をかしげながら素直に差し出してくれた。
指を絡めて、小さいころに何度も繰り返した馴染みの言葉を唱える。
「指切りげんまん 嘘ついたら針千本飲ます。」
指切った。と手を離すと焦ったようにフラン君が待て待て。針千本!?そんなこと言って大丈夫なのか?と
言い出した。
その慌て様は見かけ相応の子供のようで思わず笑っていると、ムッとしたのか何を笑っている。と
怒られてしまった。
「ごめんごめん。それぐらい破らない自信があるってことだよ。」
立ち上がって砂埃を払う。
怒ったり泣いたりしたフラン君はだいぶ落ち着いてきたらしい。
フッと笑ってせいぜい破らないようにしてくれ。と言った。
再び歩き出し、先ほどから気になっていた口調の変化について聞いてみる。
なんでも、敬語は仕事用で普段は先ほどのような調子らしい。
僕には敬語は必要ないというと、オーナーだからと断られてしまった。
それでも食い下がると仕事以外ならと了承してくれた。
ついでに呼び方もオーナーから名前呼びに変更にしてもらった。
フラン君と仲良くなれたと上機嫌で食堂に向かう。
話しかけすぎて終いにはいい加減にしないともう口を利かないと脅されて連行されたほどだ。
実は章別に勝手に裏テーマを設定していたのですが、1章のテーマはアルと仲良くなること
2章はフラン君と仲良くなることでした。
とりあえず達成です。